筆者は最近、「ウクライナ問題で『米ロ新冷戦』が始まるか?」という質問をよく受ける。しかしこの質問は、モスクワ在住者には奇妙に聞こえる。そもそも2008年8月、ロシアは米国の“傀儡国家”グルジアと一戦交えたばかりだ。

それだけではない。米ロの戦いは00年以降、絶えたことがなかった。

03年、米エクソン・モービルは、当時ロシアの石油最大手だったユコスを買収しようとした。プーチン露大統領は、「ロシア最大のドル箱を渡してなるものか!」と激怒。ユコス社長のホドルコフスキー氏を逮捕させた。

しかしその後、ロシアの縄張りである旧ソ連諸国で、03年グルジア、04年ウクライナ、05年キルギスという具合に次々と革命が起きたのである。

これらがすべて米国の仕業であることは、ほぼ確実視されている。その過程はいつもワンパターン。大統領選や議会選挙で親ロシア派が勝利すると、「選挙に不正があった!」と大規模デモが起こる。デモは、親ロ派のリーダーが圧力に耐えられなくなり、辞任するまで続くのだ。

何だか「トンデモ話」にも聞こえるが、当事者からはミエミエ。革命で失脚したグルジアのシェワルナゼ元大統領は、「外国の情報機関が私の退陣を周到に画策し、野党勢力を支援した」と断言(朝日新聞03年11月29日付)。また、キルギスのアカエフ元大統領も、「政変では米国の機関が重要な枠割を果たした」と語っている(時事通信05年4月7日付)。

さらに、産経新聞は05年4月2日付の紙面で、キルギスの革命を支援したNPOとして、「フリーダム・ハウス」「国家民主研究所」「国際共和研究所」を挙げ、これらの予算が「92年の『自由支援法』に基づき、米国家予算から捻出されている」と指摘している。

さて、ウクライナだ。この国で革命が起こるのは04年に続き2回目。無論、プーチンは「全部米国が悪い」と認識していて、3月4日、「西側のパートナーが、ウクライナでこれ(革命)をやるのは初めてではない」と厳しく非難した。

「米ロ冷戦は起こるか?」という問いへの答えは、「米ロ冷戦はずっと前から続いているし、今後も長く続いていく」である。もちろん、それは昔のような「イデオロギー対立」ではない。もっと生々しい「国益」をかけた戦いなのだ。

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