2009年12月、国際金価格は、過去最高の1トロイオンス=1200ドル台をつけた。1999年7月は同250ドル前後だったたので、10年で約5倍に上がったことになる。

価格上昇に弾みがついたのは、05年以降のこと。原油価格上昇や、新興国の経済発展によるインフレ懸念が浮上したためだ。加えて07年にサブプライム問題が露呈、08年にはリーマンショックと、立て続けに世界的な金融不安が高じたことで、加速度的に上昇した。

現在、円建ての国内金価格は1グラム3300円台をいったりきたりという状況だ。今からでも買うべきか、また、すでに投資している人にとっては売るべきなのかが気になるところだ。

価格を左右する要因の一つとして注目されているのが、アメリカ、ドイツの中央銀行についで公的機関として世界3位の保有量を誇るIMF(国際通貨基金)による売却である。09年、IMF理事会では途上国支援のための融資枠を拡大するため、総保有量の8分の1に相当する403.3トンの売却を承認、すでに売却が始まっている。これだけ大量の金が売却されれば、価格暴落を懸念する声もある。

しかし、今回、市場に及ぼす影響は軽微なもので済みそうだ。IMFが金を売却する際には、あらかじめ通知を行うことに加えて、購入に関心を示す各国の中央銀行や公的な金保有資格者があれば、市場で売却される前に、直接取引が行われるからだ。リーマンショック以降、欧州をはじめとする主要国の中央銀行は、保有する金の売却を抑えるようになった。さらに中国やインドなどの新興国も、金購入の意向を強めている。こうした国際需要の高まりにより、IMFが売却した金を十分に吸収できる可能性が高い。