中央省庁の幹部人事を一元管理する「内閣人事局」が5月中に発足、初代の内閣人事局長は、杉田和博官房副長官が兼務することになった。官房副長官は中央省庁の事務方トップであり、内閣人事局長の兼務によって杉田氏が中央省庁全体の人事ににらみをきかせることに。

杉田氏は警察庁出身。温和で調整能力が高い人物として知られるが、他方では「危機管理には通じているが、社会福祉や経済といった国民生活全体を見渡す視野の広さに欠けている」(官邸関係者)との指摘も。

その杉田氏には体調面でも不安があり「内閣人事局長をいつまで続けられるか疑問」という声が霞が関で上がっている。

「一昨年の安倍首相就任会見中、会見に陪席していた杉田氏は、体調不良で退席している。原因は脱水症状を起こしたためと説明され、その後すぐに回復。これまで副長官の要職を無難にこなしてきたのですが、今春、会議中に顔色が真っ青になって、再び会議を途中退席したのです」(官邸詰め記者)

そのため、予算成立後に「副長官を辞任するのではないか」という噂さえ広まっていたが、安倍首相と菅官房長官の信任が厚い杉田氏は、留任して新たな要職を兼務することになった。

「杉田氏の体調については“一過性の貧血らしい”と言われています。一時的に貧血で不調を訴えても、すぐにケロリとよくなる。倒れたその日に酒を飲みにいったりしています」(官邸筋)

出身省庁の警察庁にとって、杉田氏の健康状態は気がかりだ。このところ官邸内で外務省の力が強まっているからだ。特に安倍首相が、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)の初代事務局長に外務省出身の谷内正太郎内閣官房参与を起用したことは、警察庁にはショックだった。

「外務省は“NSCは外務省の植民地”と勝利宣言。一方、官房副長官をはじめ内閣危機管理監などの次官級ポストを握り、わが世の春を謳歌してきた警察庁は焦っている。3月に北朝鮮拉致被害者の横田めぐみさんの両親が、モンゴルでめぐみさんの娘と初めて対面したが、警察庁出身の三谷秀史内閣官房拉致問題対策本部事務局長(当時)は事前に外務省から知らされていなかったらしい。警察庁は地盤沈下を防ぐのに躍起だ」(官邸関係者)

霞が関の勢力争いは熾烈だ。

【関連記事】
日本版NSCめぐる外務省・警察庁の主導権争い
日本版NSCは、何の役に立つのか
内閣法制局を憲法の番人にさせた「旧内務官僚」
「日本版NSC」初代トップ人事めぐる悲喜こもごも