孫の代まで返済に追われる可能性も

奨学金をいくらまで借りられるのか相談されることがあるが、この発想は危険だ。一部の支給されるタイプのものを除き、奨学金は借金と同じ。必要な額は借りなければいけないが、原則的に少なければ少ないほうがいい。

日本学生支援機構で借りたケースを例に考えてみよう。同機構の奨学金には無利息の一種、利息付きの二種があるが、一種は要件が厳しく、多くは二種で借りることになる。二種の金利は、変動か固定を選択するが、学生の間は無利息で、利率は卒業時点に決定する。月8万円を4年間借りると、元本は384万円。金利が1%の場合、元利合計は425万7177円となり、返済期間は20年間、返済額は月1万7737円になる。

これくらいなら無理なく返せる気がするかもしれないが、油断は禁物だ。4年後に必ず就職できているとはかぎらないし、金利が上がるリスクもある(上限は3%)。

このご時世ゆえ、パートナーが奨学金を利用しているケースも考えなくてはいけない。その場合、返済額は倍の月3万5474円に。当初は2人で働けるかもしれないが、妻が出産で休職すると、途端に家計は苦しくなる。

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返済の有無によって、30歳で子の預貯金に2倍差!

怖いのは、孫の代まで影響を受けることだろう。奨学金の返済は卒業の半年後から始まる。仮に子どもが就職して1年後に結婚、さらに1年後に出産したとすると、奨学金を完済する20年後、孫は18歳になって大学進学を迎える。子どもが奨学金の返済に追われて貯蓄ができていないとすると、孫も奨学金に頼らざるをえなくなる。まさに負の連鎖だ。

悪循環を断ち切るには、奨学金の額を減らす努力が必要だ。二種の貸与月額は3万、5万、8万、10万、12万円の5種類だが、学費や生活費を計算して月6万円足りないなら、余裕を持って8万円借りるのではなく、5万円のコースを選び、足りないところはバイトや節約で工夫すべき。貸与月額を5万円に抑えれば、返済15年で元利合計は259万7188円、月返済額は1万4428円。月8万円より返済期間が短く、月々の返済額も少なくて済む。