モノづくりの魂はすっかり抜けた

ソニーが「再生の切り札」として期待を寄せているコンソール(据え置き)タイプの新型ゲームマシン、プレイステーション4(PS4)が、日本国内でも発売された。2013年11月から、北米を皮切りに世界56カ国で販売されて、今年3月末までに世界500万台という販売目標を前倒しでクリアするほど、滑り出しは順調だ。

しかし、スマホで手軽にゲームを楽しむユーザーがゲームファンの主流の時代に、ハイスペックのコンソールマシンがどこまで受け入れられるか大いに疑問だ。マニアやコアなゲームファンが初速を引っ張っても、かつてPS2がソニーの利益の半分以上を稼いだような状況にはならないと思われる。残念ながら、PS4はソニーの救世主にはならないだろう。

ソニーの14年3月期の連結業績予測は1100億円の赤字。3月期の通期見通しが赤字なのは、電機大手8社の中でソニーだけ。つまりソニーの一人負けの状況だ。

足を引っ張ったのはパソコン事業とテレビ事業。ソニーは「VAIO」ブランドを投資ファンドの「日本産業パートナーズ」に売却してパソコン事業から撤退し、10年連続の赤字が見込まれるテレビ事業は分社化するなどのリストラ策を発表した。

アナログ時代に独創性と高い技術力、デザイン性を売りに、数々のヒット商品を世に送り出してきたソニー。デジタル技術についても、ソニーはどこよりも進んでいたし、デジタルエレクトロニクスを仕掛けたのもソニーだった。

しかし、問題はデジタル化の意味を、当のソニーもよくわかっていなかったことにある。

デジタル化の際立った特徴の一つは商品の「コモディティ化」が加速することである。同じチップを使っているのだから先発でも後発でも商品の基本性能に変わりはない。先発優位のアナログ時代と比べれば、デジタルの時代は後発優位とまでは言わないが、後発劣位ではない。