生産規模で世界第2位の鉄鋼会社「新日鉄住金」が誕生し、1年余が過ぎた。世界1位のアルセロール・ミタルや経常利益ベースでトップの韓国ポスコとの競争に勝ち抜く鍵はどこにあるのか。

新日鉄住金の経営は今のところ順調に推移している。主な要因は3つある。

まず、合併による統合効果が大きい。生産品種の集約、調達先の共同化、輸送船の融通などができるようになった。

2つ目は、昨今の円安傾向だ。1ドル105円を突破する展開になれば、利益率でポスコを上回る可能性が高い。

3つ目は、競争環境の変化である。ライバルのポスコは、同じく韓国企業である現代製鉄の台頭や、ウォン高の影響を受けている。一方の日本企業は、合併、集約が一段落し、国内の競争環境は好転したと言えよう。

同社はこうした優位点に甘んじず、昨年11月、独鉄鋼大手・ティッセンクルップの米国鉄鋼工場をミタルと共同で買収すると発表し、攻勢に出る。北米での大口納入先である自動車メーカーへの販売力がもともと強く、自動車用鋼板の供給増が期待できるだろう。

世界市場全体では、中国企業の増加による過剰生産とそれにより引き起こされる鋼材価格下落の影響で、厳しい状況が続いている。そうした中、新日鉄住金は、工場買収に代表される合理化にいち早く取り組んできた。

国内に目を向けると、復興需要や公共事業増加の恩恵がある建設業向けに加え、自動車向け、鉄道向け、造船向けの需要増が後押ししている。4月の消費増税以降、特に自動車向けでは多少の反動が予想されるが、業績を左右するほどの影響はないだろう。

ただし、課題もある。ミタルやポスコは、原料の鉄鉱石から鉄を取り出す「上工程」を中心に供給基盤を拡充してきた。新日鉄住金は、薄板などの最終製品を造る「下工程」に強い。経営効率をさらに高めるためには、とりわけ海外で上工程の生産能力を増強し、規模のメリットを活かす必要がある。

それでも、基本的には中期的に好調が持続する見込みだ。近年、鉄鋼大手の経常利益は、リーマンショックまではミタル、その後はポスコが首位だった。今年度には新日鉄住金が首位の座を獲得する可能性が高いだろう。

(構成=菊地正憲)
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