時事通信フォト=写真

福岡銀行頭取 谷 正明(たに・まさあき)
1943年生まれ。早大卒。66年福岡銀行入行。副頭取などを経て2005年頭取。07年ふくおかフィナンシャルグループ会長兼社長。13年6月全国地方銀行協会会長。


 

地方銀行の再編機運が高まっている。昨年は東京都民銀行と八千代銀行が統合に動き、今秋には共同持ち株会社の傘下に入る。金融庁の畑中龍太郎長官も、1月中旬に開かれた全国の地銀頭取との会合で「経営統合を経営課題として考えてほしい」と踏み込んだ。3メガバンクへの集約が進んだ大手都市銀行に比べ、地銀は100行以上が乱立したまま。低金利下で過当競争が続く中、将来人口が減少する影響を大きく受ける地銀は、規模拡大による収益基盤の強化を迫られている。

再編で台風の目になりそうなのは、現在全国地方銀行協会会長を務める福岡銀行の谷正明頭取。同行では日銀OBの頭取が5代続いてきたが2005年4月、半世紀ぶりに谷氏が生え抜きの頭取に就いた。就任5日後に前頭取の寺本清会長が死去する出来事もあったが、翌年には不良債権処理に苦しんでいた熊本ファミリー銀行(現熊本銀行)との経営統合を打ち出す。07年に持ち株会社のふくおかフィナンシャルグループを設立して会長兼社長に就任した谷氏は、長崎県が地盤の親和銀行も傘下に収め、預金量で地銀全国トップクラスの地域金融グループを築いた。スピード感を持って、県をまたぐ広域的な再編を仕掛けた辣腕に評価は高い。行内の求心力も強く、「谷の前に人はなく、谷の後にも人はない」(地銀関係者)と言われる実力者だ。

今年1月末には千葉、静岡、広島など有力8地銀との業務提携を発表した。各行が個別に融資する地元企業に対し、遠隔地の取引先を互いに紹介したり、M&Aを支援したりして連携を深める構想だ。「中長期で地銀のマーケットは縮小する。再編を視野に入れなければならない」という持論の谷氏は、預金量をさらに拡大させる考えだ。次の一手に注目が集まっている。

(時事通信フォト=写真)
【関連記事】
日本経済再生のカギは、地方の金融機関が握っている
5つのシナリオで「軋む日本」復活へ
「史上最大の金融危機」これが世界を救う方法だ!
国債:「アベノミクス失敗で大暴落」の現実味
「半沢直樹」は不可解な人事? 会社の狙いをどう読むか