巨大な富を築き、それを永きにわたって継続していける真のお金持ちたち。成功するための仕事との向き合い方、意思決定や思考のパターン、代々続けていくための子供の教育とは、どのようなものなのだろうか。富裕層の専門家3人が、彼らの素顔を明かす。
【富裕層の定義】ここでは、船井総研の小林昇太郎氏が独自の方法で算出した5億~10億以上の金融資産を持つと推定できる3万4879人を「超富裕層」、1億~5億未満の金融資産を持つ166万1844人を「プチ富裕層」と定義する。同志社大学教授の橘木俊詔氏は「全国高額納税者番付」をもとに2000年度、01年度と2年連続で1億円以上稼いだ約6000人を対象に調査を実施。

金銭感覚やお金に対する哲学について、橘木教授は「いかにもお金持ちらしい消費行動をとるのはプチ富裕層。超富裕層は意外に地味で庶民的です」と証言する。船井総研の小林氏も同じ見方だ。

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擬似リッチの見せびらかし消費、本物リッチの堅実消費

「プチ富裕層は、ビジネスを広げ将来的に資産規模を大きくするために、自分のブランド力を高めていくことに熱心です。そのため、消費にしても趣味や慈善活動にしても非常に派手で、『見られる』ことを意識します。クレジットカードのブラックカードを所持して、仲間内で見せびらかすのもプチ富裕層ならではの行動です」(小林氏)

一方、超富裕層の目的は資産の急拡大ではなく、次世代にいい形で引き継ぐことだ。そのためには「見せびらかす」よりも「目立たないようにする」ほうが好都合。だから超富裕層には「街で会ってもそれとは気づかないような人が多い」(小林氏)という。

「移動するときも高級車に乗るのではなく、ユニクロのシャツを着てタクシーを拾ったり、地下鉄に乗ったりしています。ただ、当然ですが財力はあるので、興味を持ったことや好きなことに対しては集中的にお金をかけます。たとえば、海外の滅多に行けないような場所へ1カ月くらい旅してきたとか、趣味に対して尋常ではない金額を投じたとか、そういったことはよく聞きますね」

とはいえ日常生活が質素であれば、電車で隣り合わせても気づくことはないだろう。それどころか「あなたの同僚にも超富裕層の子弟がいるかもしれません」と小林氏は言う。超富裕層といっても一族全員が家業に従事しているわけではなく、多くは一般企業で働いているからだ。

「商社や保険会社やマスコミには、資産家の子弟がコネ入社していることがありますから、気づかないまま超富裕層と一緒に働いているのかもしれません」

いずれにせよ、超富裕層はお金持ちらしい姿をしているわけではなく、メディアにもほとんど登場しない。社会的な活動をするときも、表に出るのではなく「フィクサー的な動きに終始する」(小林氏)。消費でも、社会貢献でも目立つことを好むプチ富裕層とは対照的な、非常に「見えにくい」存在なのだ。