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資生堂・次期社長 魚谷雅彦(うおたに・まさひこ)
1954年生まれ。77年同志社大学卒業後、ライオン歯磨(現ライオン)入社。米コロンビア大MBAを取得後、クラフト・ジャパン(現モンデリーズ・ジャパン)副社長、日本コカ・コーラ社長、会長を歴任。2013年より資生堂マーケティング統括顧問。14年4月1日社長就任予定。


 

資生堂が国内初の洋風調剤薬局として東京・銀座で産声を上げたのは140余年前の1872年。その老舗企業が、異業種からスカウトしたばかりの顧問を社長に起用する異例のトップ刷新に踏み切る。外部出身者を社長に登用するのは2度目で73年ぶりのことだが、わずか1年未満の在籍で、役員経験のない人材の就任は初めてだ。

業績悪化に悩む資生堂は、2013年3月には末川久幸前社長が「体調の不安」を理由に突如退任。前田新造会長が暫定的に社長を兼務していたが、その後任社長としてヘッドハントという手法で迎えられたのが魚谷雅彦氏だ。

魚谷氏は大学卒業後、ライオン歯磨(現ライオン)に入社。コロンビア大MB Aを取得し、米国の大手食品会社の日本法人で副社長に就任。さらに日本コカ・コーラに上席副社長として入り、社長、会長を歴任する。在籍中、缶コーヒー「ジョージア」などのヒット商品を手がけた。07年にコンサルタント会社を立ち上げ、NTTドコモのサービスの改善に手腕を発揮した。

資生堂は高いブランド力を誇りながらも、複雑化する市場の変化に対応が遅れたことから苦戦を強いられている。魚谷氏に白羽の矢が立ったのは「高いマーケティング能力と強いリーダーシップを持ち、グローバル感覚もある人物」(前田氏)というのが決め手。それもこれまでの巧みな“渡り鳥人生”の経歴を振り返れば頷ける。ただ、不採算の仏子会社の売却や鎌倉工場の閉鎖など「負の遺産」処理にメドがついたとはいえ、しがらみの多い老舗企業の社風・文化を理解しながら、ブランドを立て直すのは生易しいことではない。

干支は午年生まれで今年は年男、しかも還暦の節目の年である。これまで経験がないほどの“不良馬場”での手綱さばきに社内外から関心が集まる。

(写真=時事通信フォト)
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