エコノミスト、経営コンサルタント 中原圭介氏

私は、資本主義の限界が迫っていると考えています。その原因は実体経済とマネー経済の乖離にあります。

世界の金融資産の規模は、1980年には12兆ドルと世界のGDP合計額とほぼ同じでした。ところが「リーマンショック」の前年の2007年には、世界のGDP合計額の約3.8倍の180兆ドルにまで膨らんでいました。

リーマンショックを経て、実体経済とマネー経済の差はいったん縮小に向かいましたが、ここにきて、再び乖離が広がりつつあります。米国はこれまで3度にわたり大規模な量的金融緩和(QE1、QE2、QE3)を行っています。欧州も11年12月と12年2月の2回に分けて合計で108兆円の実質的な金融緩和を行いました。11年下期からは、新興国でも金融緩和の動きが広がり、市場には過剰資金が溢れています。こうした動きは、リーマンショックに匹敵するほどの大激震の前触れだと考えられます。

正確な未来予測は困難ですが、これまでのような経済成長を前提にした投資行動は、もう合理的ではありません。長期投資や国際分散投資ならば、必ずリターンが得られる、という主張を信じるべきではないでしょう。

どんなにお金があっても安心は買えない

それではどうすればいいか。私はセミナーなどで「お金に縛られるのをやめましょう」と話しています。

どんなにお金があっても、安心は買えません。500万円の世帯年収のある人は、たとえ600万円でも1000万円でも、将来が不安なはずです。なぜなら人間の欲望は、どこまでいっても尽きることがないからです。

だから具体的に考えないかぎり、老後資金はいくらあっても足りません。「老後のために1億円貯めたい」という相談を持ちかけられることもありますが、私は「なぜ1億円が必要なのですか」と問い返します。