社会と企業を取り巻く環境を法律面から見てみよう。両者の関係は、この数年間で大きく変化した。

例えば、会社法、金融商品取引法、個人情報保護法、改正特定商取引法、改正独占禁止法など、グローバル時代に合わせて、従来の法律を抜本的に改正、改題したり、新法が相次いで制定されている。では、いったいどんな法律が注目されるのか。

牛島総合法律事務所の牛島信弁護士は、そのキーワードとして「消費者主権」をあげる。

「経済がグローバル化し、市場が競争型になっていくほど、消費者を守らなければなりません。例えば、金融庁は消費者が金融商品の購入や取引で不利益を被らないよう金融機関に対して厳しく対応しています。自らの組織を“金融消費者保護庁”と位置づけているほどです。一方、司法も消費者の権利を擁護しています。例をあげれば、最高裁が消費者金融のグレーゾーン金利を違法としたり、英会話学校最大手で破綻したNOVAで問題となった、中途解約時の返還金精算も違法としました。裁判所は消費者保護を優先した判決を下すようになっているのです」

当初、NOVAは経済産業省と協議して精算規定を決めたと強気だった。霞が関のお墨付きをもらったものが違法になるはずはないと考えていたようだ。それは経済産業省も同じだったに違いない。

消費者保護に関連する法律は多い。ほんの一握りだが、いくつか紹介すると、例えば、金融商品取引法は投資家が被害を受けることなく、安心して金融商品を取引できるようにルールを一本化した法律だ。訪問販売などトラブルの生じやすい取引や事業者の悪質な勧誘などを取り締まる特定商取引法もある。事業者が嘘をついたり、強要するなど不適切な行為で交わした契約などを取り消せる消費者契約法、悪質な勧誘によるクレジット契約を取り消せる割賦販売法などがある。また、消費者に代わって内閣総理大臣の認定を受けた消費者団体が事業者を訴えることができる消費者団体訴訟制度もある。