どんな印象を与えるか、一呼吸おいて考えよ

ブリヂストンCEO 
津谷正明氏

私は12年3月のCEO就任以来、改革のキーワードとして、「コミュニケーション」「チームワーク」「ボトムアップ」を掲げています。コミュニケーションを深めれば、良好なチームワークにつながります。そのような環境の中で、ひとりひとりが全体最適を考えて提案し、優位性を勝ち取るボトムアップ型に転換せよ、と呼びかけています。トップ集団を抜け出し、断トツ企業をめざすためです。

これらのキーワードの中で最も基本となるのが、コミュニケーションです。コミュニケーションは、双方向であることが必要で、相互理解の道具にほかなりません。日本では「男は黙って……」といった沈黙賛美の考え方があるかもしれませんが、それではダメ。言わなければ伝わらないし、お互いに言葉をやり取りし続けなければ理解は深まりません。

ブリヂストンのようなグローバル企業で、文化的背景も常識も違う人々が頻繁に意思疎通を行うためには、社員それぞれの努力が必要です。われわれはお互いにわかり合えているようで、簡単に誤解するし、勝手な思いこみがあります。だからこそ各人が話をし、どうやったらわかってもらえるのかをとことん考えるのです。相互理解がなければ、信頼も築きようがありません。

双方向のコミュニケーションをとるためには、3つのポイントがあります。

1つ目は、相手の立場を考えて話をすることです。

弊社は1988年に米のタイヤメーカー・ファイアストン社を買収しました。このことは、結果的に当社の第二創業とも言える大きな成功をもたらしましたが、統合直後は大混乱でした。

その原因は、コミュニケーション不全にありました。お互いが自分たちの言い分を通すことに躍起となり、議論が進まない。当時私も、現場の一員としてこの問題を痛感しました。

こちらの発言に対し、相手はどう思うか。当たり前のことですが、発言をする前に一呼吸おいて考える必要があります。その上でお互いの言い分をすり合わせることが大切です。