グローバル展開、法人営業、ネット、富裕層攻略……。時代の流れを受けて、創業101年企業が動き出した。代理店業から、 “メーカー業”へ脱皮を図る「戦略」を徹底分析する。

“ガラパゴス企業”を変えろ

グループでの売り上げ1兆2355億円(2012年度)、国内トップにして世界第6位の旅行会社、大学生の就職ランキング文系第1位。JTBを彩る形容詞は、常に「安定」の2文字とイコールだ。政府主導のもとに生まれた恵まれた出自と強固な経営基盤、101年の歴史、抜群の知名度とブランド力を持つJTBは、民間企業ながらいまだに「お役所」的なイメージを濃厚に残し、日本の旅行会社の代名詞として君臨してきた。

だが、同社が掲げる事業領域にもはや「旅行」の文字はない。06年、JTBはグループ本社を持ち株会社として11の地域事業会社と3つのマーケット特化会社に分社化を果たすと同時に、グループを支える企業理念を転換した。総合旅行会社から交流文化産業へ。日本人相手に旅行商品を斡旋する何でもありの全方位型旅行業から脱皮し、人と人との交流を軸に、全国・全世界から地域に人々を受け入れ、かつ世界中にあるJTBのネットワークを活用して、世界の人々を世界に送り出すビジネス。それが現在のJTBの事業ドメインだ。

企業理念を再構築した背景には、旅行マーケットのドラスチックな構造変化がある。日本人の旅行形態の主流は団体から個人に移り替わった。JTBが得意としてきた団体旅行の割合は1968年には50%を超えていたが、いまでは10%未満だ。職場旅行も94年には88.6%あった実施率が、いまや半数以下。国内旅行は1人あたりの宿泊旅行回数、宿泊日数ともに低下し、マーケットの拡大を牽引してきた日本人の海外旅行も01年からは低落傾向にある。

ホテルや航空会社の直販も当たり前となった。インターネットの普及により、店舗を持たず、ネットのみを販売チャンネルとする新興の旅行会社も急成長を遂げている。もう全国津々浦々に店を構え、渉外営業を熱心に行いさえすれば、旅行者を獲得できる時代ではない。