「注目が集まったのはよいチャンス」

「小泉純一郎元首相がああいうこと(原発即ゼロ)を言うのは想定していなかった。元首相が問題視した高レベル廃棄物の最終処分場問題は、年末にまとめる経済産業省のエネルギー基本計画案に新たな観点で書き込みたい。小泉発言に意外と注目が集まったのはある意味よいチャンス。もうちょっと前に出ていきたい」

自民党の原発推進派議員でつくる「電力安定供給推進議員連盟」(細田博之会長)の会合で、経済産業省資源エネルギー庁の幹部はそう発言した。

その半月後の12月6日。経産省は総合資源エネルギー調査会基本政策分科会に「エネルギー基本計画」の原案を提出。そこには原発は「重要なベース電源」であり、現在停止中の原発も安全性が確認され次第「再稼働を進める」と明記されていた。民主党政権が掲げた「原発ゼロ」からの転換が打ち出されたのだ。

小泉元首相の「原発即ゼロ」発言の最大の理由となった最終処分場問題については、自治体の立候補を待つのではなく、国が選定する方法に改める、とされた。分科会案は年内にまとめられ、2014年1月に閣議決定される見込みだ。

候補地選びの変更は、処分場受け入れ地が決まらないため。経産省の外郭団体「原子力発電環境整備機構」が初めて最終処分場受け入れ地を公募したのは02年。応募したのは高知県東洋町だけだった。ところが東洋町では住民の反対運動が高まり受け入れ派の町長が町長選挙で敗北、応募は白紙撤回された。その後、処分場に立候補する自治体は皆無だ。

小泉元首相はプレジデント誌創刊50周年記念講演で、最終処分場として建設中のフィンランドの「オンカロ」(=洞窟、放射性廃棄物を地中深く埋めて10万年後の無害化を待つ施設)を視察した印象をこう語っている。

「10万年持ちこたえられる建造物が果たしてつくれるのか。(略)何が起こるかは、まったく予想できません」。

これに対し、推進議連の細田氏らが噛みついた。オンカロと日本は処分方法が違い、同列に論じるのは誤りというのだ。オンカロは使用済み核燃料をそのまま地下に埋める直接処分方式。一方、日本は、原発施設から出た使用済み核燃料を再処理して高レベル放射性廃棄物とウラン・プルトニウムに分け、後者を燃料として再利用し、放射性廃棄物はガラスと融合してガラス固化体に。それを金属製の二重の容器に入れて、さらに緩衝材の粘土で覆い、冷却のため30~50年間、中間貯蔵してから地下300メートル以上の深さに埋める計画だ。

細田氏がまとめた「原子力発電の現状と将来」という資料によると、ガラス固化体は直接処分に比べ、体積を4分の1に減らせ、無害化までの期間を10分の1以下に短縮できるという。細田氏は議連で、「容積が小さく、安全だ。爆発したり高熱を発する心配はない。放射性物質も出ない。小泉さんはそういうことを知らないのが問題だ」と強調した。