自分をさらけ出せる人とは、相手の懐に入り込み、共感を得ることができる人だ。

私は、自分を知ってもらいたいときには、なぜファイナンシャルプランナーという仕事をしているのかを話すことにしている。そこに、過去から現在につながる私の物語が凝縮されているからだ。

それは、私の父の物語でもある。父は、私が22歳のときに亡くなった。

私の生まれ故郷は、熊本県の天草という島だ。実家は三代続いた商家で、旅館や町の電機店を営んでいた。私が生まれたときは、貸家が20軒もあり、私は300坪ある自宅で、離れの個室を与えられて育った。そのくらい裕福な家だった。

だが、父が亡くなったとき、わかったことがある。

父は親類などの保証人になり、借金2億円を背負っていたのだ。返済のために貸家を売り払っていったが、それでも足りず、父は寝る間も惜しんで働いた。

注文や修理の依頼があれば島中どこへでも出かけて行き、人の役に立とうとした。そして、私が22歳のとき、患っていた糖尿病を悪化させて亡くなった。

借金は父ひとりで1億2000万円まで返済し、残りの8000万円は死亡保険金で清算したのだ。

なぜ、父は親類の借金のために命を削って働かなくてはならなかったのか。

それについての思いが、私のなかにはずっと残っていた。

独立してからは、お金で苦労して人生を終えた父のような人をつくりたくないという思いがいっそう強くなった。たんにファイナンシャルプランナーとしてだけでなく、人生とお金のバランスについてアドバイスできるコンサルタントになろうと決めた。