時事通信フォト=写真

富士重工業社長 吉永泰之(よしなが・やすゆき)
1954年、東京都生まれ。77年成蹊大学経済学部卒業後、富士重工業入社。戦略本部長、スバル国内営業本部長などを経て、2011年6月より現職。


 

「運も実力のうち」とはいうが、自動車メーカーの中で、この人ほど元気いっぱいの社長はいないだろう。東日本大震災後の2011年6月に富士重工業社長に就任した吉永泰之氏である。

10月末に発表した13年4~9月期の連結決算では「売上高、利益のすべての指標で半期として過去最高、世界販売台数でも過去最高を記録した」と、笑いをかみ殺しながら「過去最高」を繰り返した。しかも、特筆すべきは、日本の乗用車メーカー8社のうち、販売台数こそ最下位だが、営業利益率(13.4%)は2ケタとなり、筆頭株主のトヨタ自動車(10.0%)も抜いて首位に躍り出た。

生産の7割以上を国内工場に依存し、その大半を輸出に振り向けている。好決算の要因はアベノミクスによる円高修正の効果と、世界販売の5割以上を占める“ドル箱”の米国販売が絶好調なこと。「現地のディーラーからは、“タマ”があればまだまだ売れる。もっと供給を増やしてほしいとプレッシャーをかけられている」(吉永社長)ほど。ぶつからない「アイサイト」などの独自の先端安全技術がスバル車のブラント価値を高めたことも大きい。

吉永氏の入社時は、大株主の旧興銀と日産の覇権争いの真っただ中。その後は米GMと資本提携を結ぶなど、パートナーが代わるたびに業績の悪化に苦しんできた。GMと提携解消後はトヨタ傘下で「選択と集中」を加速させたが、吉永氏は戦略本部長として大ナタを振るい、その手腕を買われて社長のイスを射止めた。

目下、死角は見当たらないが、「好事魔多し」ともいう。小粒でも存在感のある自動車メーカーのトップとしていつまで“過去最高”を更新できるか。円安効果が薄れる今、以前にもましてカジ取りの責任は重い。

(写真=時事通信フォト)
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