実際は半数以上が「男装」

「撮りましょうか?」(コスプレイヤー=みるる、撮影=YU-SUKE)

奇抜で露出度の高い衣装を着て、グラビアアイドルのように、にっこり笑う可愛い女の子。マスメディアに取り上げられるコスプレイヤーたちは、ほとんどすべてがこんな感じです。しかし、実際にコスプレイヤーが集まるイベントに参加してみると、大概の場合、参加者の女性たちの半数以上は男装コスプレをしています。

男装といえば、『リボンの騎士』のサファイアや『ベルサイユのばら』のオスカルを思い浮かべる人もいるでしょう。彼女たちは、「女らしい」という言葉に含まれる、社会通念としての女性像を超えて、「男らしく」「女らしからぬ」振る舞いや立場をとるための変身装置として男装を利用していました。男装コスプレには、そのような目的はありません。そこには、とても「女らしい」意味合いがあるのです。

コスプレはキャラクターへの愛情表現ともいえます。以前この連載で、「なりきる」という意味で、コスプレは日本の伝統芸能である「能」に通じるものがあると説明しました(第6回「コスプレをビジネスにするには(前編)」http://president.jp/articles/-/9251)。能には『井筒』という有名な演目があり、まさに男装コスプレと共通する意味合いを読み取ることができます。『井筒』には、愛しい男性の衣服をまとって男装し、水面に映る自分の姿を眺めて喜ぶ女性が登場します。この場面が、憧れの男性キャラクターのコスプレをして、その姿が映った写真を眺めて喜ぶ男装コスプレイヤーと重なります。憧れの男性キャラクターと一心同体になる男装コスプレは、とても「女らしい」愛情表現だと思うのです。

男装コスプレは、男性にはあまり人気がありません。コスプレイヤーが集まるイベント会場には、気に入ったコスプレを撮影しようとカメラを持った男性たちも集まってきますが、彼らのターゲットは大概、マスメディアで紹介されるような、外見が「女らしい」コスプレイヤーです。そんなコスプレイヤーの周りには、撮影のための行列や人だかりができたりしますが、男装コスプレイヤーには男性たちはあまり近寄りません。男性たちが求める「女らしさ」を外見から読み取ることができないからです。