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九州旅客鉄道社長 唐池恒二(からいけ・こうじ)
1953年生まれ。京大卒。77年旧日本国有鉄道入社。九州旅客鉄道(JR九州)取締役、常務、専務などを経て2009年社長。


 

10月にデビューする九州旅客鉄道(JR九州)の豪華寝台列車「ななつ星in九州」が人気だ。九州を周遊する1泊2日と3泊4日の2コースがあり、料金は2人1室の利用で1人当たり最高56万6000円と高額だが、完売した今年10月~来年3月出発分の当選倍率は7倍から9倍。30億円掛けてラウンジ車、食堂車を含めて7両編成で製造し、客室にはシャワーとトイレも完備。贅沢な旅を楽しむ“クルーズトレイン”という発想がお金と時間に余裕のあるシニア層の心をつかんだ。

企業規模は鉄道会社の中では大きいとはいえないが、斬新なアイデアでは負けないJR九州。ユニークな施策を連発するのはアイデアマンの唐池恒二社長だ。営業本部時代には、蒸気機関車「あそBOY」を復活させたり、優雅なデザインの観光特急「ゆふいんの森」を走らせたりと、新たな企画で需要を開拓。アジア諸国に近い立地を生かし博多―韓国・釜山の国際航路を開設させたほか、赤字の外食事業を立て直した。唐池氏が手掛けた居酒屋「うまや」は佐賀の地鶏や唐津の豆腐が人気で、東京でも繁盛店となっている。

JR九州には不採算路線が多く、鉄道以外の事業を伸ばさなければ生き残りが難しい環境にあった。唐池氏はもともと、幹部候補として国鉄に入社。巡り合わせでJR九州に籍を置いたが「JR東日本やJR西日本への対抗心がユニークな経営の原動力になっている」(銀行関係者)との指摘もある。

2011年にはJR新幹線鹿児島ルートが全線開業し、国内最大級の商業駅ビル「JR博多シティ」もオープンした。社運をかけた2大プロジェクトに加え、ななつ星で業績向上に弾みを付けて、16年度までに悲願の株式上場を実現しようとしている。

(PANA=写真)
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