相手の頭の中にある思考パターンを意識できるようになると、驚くほど上手にコミュニケーションが取れるようになる。では、どうすれば相手の思考パターンを汲み取れるようになるのだろうか。

「?」「!」世界一短い手紙のやり取り

どうすれば人といいコミュニケーションが取れるだろうか。火山学を専門とする私は、火山についてならばいくらでも話を合わせることができる。しかし、ほかの話題になるとうまく通じない。自分の得意な分野以外で人と話を盛り上げるのが難しいのである。

話が通じないのは、「フレームワーク」が合わないからではないかと、あるとき考えはじめた。フレームワークとは、考え方の枠組みである。頭の中にある思考パターンといってもいい。他人とは考え方の枠組みが違っているから、コミュニケーションがうまくいかないのだ。

いいコミュニケーションのキーポイントは、このフレームワークにある。自分と他人のフレームワークの違いを意識することが、人づき合い上達の秘訣なのだ。さらに、自分のフレームワークを人へ上手に橋わたしできたときに、意思の疎通がうまくいく。

たとえば、相手が理解しやすい言葉で語りかけることで、抵抗が少なくなる。相手にとってここちよい関係を先につくりながら、互いのフレームワークを擦り寄せてゆくのである。私はこのような人間関係の達人を、「ブリッジマン」と呼ぶことにした。

フレームワークを理解するためにわかりやすい例を出そう。

「あなたにとって、大金とはいくらですか」

この問いかけをすると、いろいろな金額が返ってくる。2万~3万円から数十億円までおどろくほど差が出るのだ。違いの由来は、「大金」という言葉から、「財布の中身」「給料」「マイカー」「投資資金」「銀行ローン」「目標年収」「宝くじ1等賞」などさまざまな連想が広がることにある。

これらの回答の判断基準、もしくは答えの向こうにあるものは何だろうか。それは、人それぞれのお金に対する価値観であり、時には人生設計でもある。つまり、職業、収入、年齢などさまざまな条件から生じる判断基準によって答えは変わる。これがフレームワークの実体である。