すっぽん鍋が1800円かと思えば、からすみそばが1500円に、ズワイガニコロッケが1400円……。東京・銀座で高級感漂うメニューを手頃な値段で提供し、連日長い行列ができている日本料理店が「銀座しまだ」である。

高級素材を使った料理に腕をふるうのは、『ミシュランガイド』に掲載された日本料理店などで腕を磨いた超一流のプロたちだ。普通に考えれば、敷居の高い店であるはずだが、カジュアルな服装の20代のカップルが何組も料理を楽しそうに味わっている。なぜ、そんなことが可能なのかを探るべく、会計士の視点から現場取材を行ってみた。

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客単価を下げても収益倍増の「銀座しまだ」マジック

銀座しまだの店舗は、もともと高級な日本料理を提供していた店を居抜きで引き継いだもの。元の店は席数が8席で、客単価は1万5000円前後だったという。高級店ではどうしても滞在時間が長くなり、1席当たりのお客回転数は1日1回転がせいぜい。つまり、元の店の1日の売上高は「8席×1回転×1万5000円=12万円」と推測される。

一方の銀座しまだは4人掛けのテーブルが1つと、カウンターがあり、カウンターはすべて立ち飲み形式。最大で1度に14人のお客を入れることができる。当然、立ち飲みだと滞在時間も短く、1日の客数は60人強に達するというから、1日で約4.5回転する計算だ。

お客の注文状況を見ていると、客単価は4000円前後と考えられ、1日の売上高は「14席×4.5回転×4000円=25万2000円」と推計できる。客単価が4分の1近くに低下したとしても、立ち飲みスタイルによる回転数のアップでカバーし、元の店に比べて売上高は倍増しているのだ。