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面白かった一般書

【土井】次に「面白かった一般書」にいきたいと思いますが、1500万で『ゴルゴ13』『深夜特急』『ナニワ金融道』がランクインしているのが面白いと思います。共通するのは、やはりリアリティーです。山崎豊子の『沈まぬ太陽』はいわば社内政治の話ですが、こうしたリアリティーのある人間ドラマが彼らの好みなのでしょう。

一方、500万を見ると年齢層の違いもあるのでしょうが、ファンタジーのオンパレードです。現実をつまらないと感じると、人間はファンタジーに逃げる。特に40歳を過ぎて、「努力しても現実は変わらない」という意識になってしまうと、自分を磨くための本は読まなくなってしまいます。そして、漫画やミステリーや警察小説などに流れるのです。逆に言えば、50歳を過ぎてビジネス書を一所懸命読んでいる人には成功している人が多いということです。

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面白かった小説

【成毛】「面白かった小説」には司馬遼太郎の本が何冊も入っているけど、よく雑誌の取材で愛読書は何ですかって質問されて、「司馬遼太郎の本です」って答えてるおバカな経営者がいるよね。あれは読書体験が乏しいことを自ら表明しているようなもの。挙げちゃいけない名前だね。『坂の上の雲』はたしかにすごく面白いけど、それを言っちゃあおしまいよって感じです。

たとえばグルメ雑誌の取材を受けて、「帝国ホテルのレ・セゾンが好きでした」って言っちゃいけない。たしかに美味しいんだけど、ホテルのメーンダイニングの名前を出しちゃいけないでしょう。司馬遼太郎ってそういう作家ですよ。

【土井】やはり小説でも1500万の人は読んでいるものが違いますね。『永遠のゼロ』『告白』『チーム・バチスタの栄光』といった作品は、フィクションではあっても現実の社会問題と対峙しています。決して、ファンタジーに逃げ込んではいない。

一方、500万を見ると、『ストロベリーナイト』『容疑者Xの献身』といったファンタジー色の強い作品が顔を出しています。実を言うと、最近はビジネス書でさえファンタジー化の傾向がある。

人間は「成功が手に入らない」と思った瞬間、ファンタジーに逃げますが、日本全体がファンタジーに走っている時代かなという気がします。「面白かった小説」には特にその傾向がはっきりと見えますね。500万はもうほとんどファンタジーとエンタメです。