類似性の高い作品のPN判定を比較して、「なぜこちらのほうが評判がよく、かつ興行収入も高いのか」という考察も重ねてきました。たとえば、それぞれの映画についてブロガーが何を話題にしているのかを探るために、ブログに出てくる名詞句を抽出して、頻度を比較する「頻出語分析」という手法も使っています。
類似作品の比較から、話題の伝播を左右する2つの大きな軸が見えてきました。1つはいかに同じことを語らせるかという「共鳴性」です。観た人が同じ感動や感情を共有できるような強いメッセージが込められた作品は話題が維持されやすいということです。もう1つの軸は「周辺話題性」。作品だけを語るのではなく、その周辺にある「語りたくなる要素」をいかに発生させるかです。
たとえばハウス食品は、忘年会シーズンにツイッターを使って「ウコンの力」のキャンペーンを行いました。「ウコンの力」を食前食後のどちらに飲んでいるか、それをツイッター上で回答してもらうというものです。「二日酔い防止」という1つのテーマについて語らせ、さらに忘年会に関する幅広い話が語られる仕かけをつくりました。噂を持続させた成功例といえます。
これらブログの内容を定性的に分析する手法を、私たちは総称して「話題共鳴分析」といっています。これは消費者の潜在ニーズや、書き込みからは直接見えてこないホンネにスポットを当てて浮かび上がらせるための方法論です。
ここで、この分析に最も適したツールである「キーグラフ」について紹介します。キーグラフとは東京大学の大澤幸生教授が開発したキーワードの自動抽出アルゴリズムのこと。キーグラフを用いると語句と語句のつながりを視覚化し、その全体的な構図から意見の概要や趣旨をあぶり出すことができます。図8は、09年に鳥取県で開催された世界砂像フェスティバルに関するブログのキーグラフです。イベントの盛り上がりについても、映画や商品のヒット現象と同じようにシミュレーションができるのです。