今思えば「母からのSOSだったのではないか」と
「『介護は突然やってくる』と聞いてはいましたが、本当にその通りです。親が高齢になったら、介護について下調べをしておくことはとても大事だと思いました。私は母がとても元気だったため、全く準備していませんでしたが、知識があれば、事業所選びなどの準備を進めるうえで、戸惑う事が減ると思います。実際に介護をしていて思うのは、自分が疲弊していたら優しく接することが難しくなり、その事で新たな悩みを抱えるということ。なので、介護サービスなど、利用できることは利用することが大切だと思います」
母親は言葉が思うように出なくなってから、落ち込むことが多くなり、筑紫さんや叔母に不安な気持ちを打ち明けていた。その度に筑紫さんや叔母は励ましたが、姉だけは違った。
「負の言葉をごちゃごちゃ言い続けてため息。やめてほしいわ。私は子どもには迷惑をかけないようにしたいわ」というLINEを筑紫さんに送っいたのだ。
「姉にはがっかりしました。(今の状態になるまでは)まだ母は何でも自分でできたし、姉夫婦の洗濯もしてくれていました。なのに姉は母に迷惑をかけられていると言わんばかり。母の一番近くにいる姉が、弱気になった母を見て励ますどころか疎ましく思っているなんて……。姉に母のこれからを任せることに不安を覚えました」
母親が倒れる2日前のことだった。
筑紫さんは、母親から3年ほど前に、「将来的にはお母さんはお前と暮らしたほうがよさそうだ」と言われていたにもかかわらず、具体的に動かなかったことを後悔していた。今思えば「母からのSOSだったのではないか」と、それを見過ごしてしまった自分を責めていた。
子は必ずしも親の介護をしなければならないことはない。
だがもちろん、子がしたいと思うならば、心ゆくまですれば良いだろう。大切なのは納得のプロセスだ。筑紫さんの看護師の友人たちが言っていたように、くれぐれも無理は禁物。娘である筑紫さんのことをわからなくなってしまった時は、どうか罪悪感を持たずに、特別養護老人ホームへの入所を検討してほしい。