在宅介護の準備
母親を引き取ることを姉にLINEで伝えると、
「了解です。よろしくお願いします」
と返ってきた。
「この前は責めるつもりはなかった、ごめんなさい」
筑紫さんは以前、「愛情を持って介護できないのでは?」と母親と同居する姉に率直に伝えていたのだ。
「私もあれからたくさんのことを考えた。一番協力していかなければならない私たちがこんな事をしていたらダメだなって。私もごめんなさい。ただ、私たちがお母さんのことをちゃんと考えていたことは信じてください」
と返信があった。
「『遅いよ……姉ちゃん』と思いました。姉は何かうまくいかないことがあると、昔から全部母のせいにしていましたから……。『知ってる? ストレスは脳出血のリスクを高めるんだよ』そう言いたかったけど、飲み込みました。姉には母のためにやってもらわなければならないことがまだまだあります。母のためにも、今は姉と協力し合わなければと思いました」
その後、母親が退院するまでの間、筑紫さんは月2~4回、病院で介助指導を受ける。同時に、腰を痛めないように、腰回りの筋肉を鍛える運動を開始。
担当の作業療法士と理学療法士に母親の現状を聞くと、
・右片麻痺
・失行:道具がうまく使えない
・注意障害:注意がそれる
・失語:言いたいことが言えない、簡単な言葉は理解できている
・食事は左手にスプーンを持ち自分で食べることができるが右側が見えにくいため右側のおかずを食べない
・寝返りは左右出来るが、起き上がりは出来ない
・トイレ介助をしても5回中1、2回ほどしか排泄できないため 一日2回の導尿が必要
・尿意を伝えられない
・生活全般に介助が必要
とプリントにして渡してくれた。
筑紫さんの介助指導に母親も付き合うため、母親にとってもリハビリになった。さらに並行して、筑紫さんが住む街でお世話になる訪問診療の病院や事業所探しが始まった。
7月初旬、退院前カンファレンスで7月半ばの退院が決まる。そして退院当日、実家へは寄らず、その足で筑紫さん宅へ母親を連れ帰った。