二十歳で就職した自立心の強さ

「数年前まで、あまり試合に出ない派だったんです。ちょっとしたミニツアーとかでも結構、遠征費もかかるし。優勝できれば良いんですけど、勝てないと赤字になったりするので。

お金が無駄になっちゃうなと思って、そんなに試合に出てなかったんですけど、一昨年くらいから、やっぱり試合経験って大事だなと感じ始めてて、最近はお金と相談しながら、なるべくエントリーするようにしてます。

小さな試合でも試合勘を養えるし、一番練習になるなと。やっぱり、定期的に試合に出てるほうが、ゴルフは安定しますよね」

「お、おう」とでも言いたくなるような、今そんな調子で大丈夫なのかとこちらも心配にはなるのだが、少なくとも自分で気づいて、自分で納得してから行動するという、そんな用心深さがある。

トレーニングに時給が発生してほしい、遠征費がもったいないという具合に、お金の話が多いのだが、これは裏を返せば、自立心が強く、自分で生計をやりくりするという気持ちが強いからだ。

平塚は難病が快復しつつあった二十歳のころ、正社員としてゴルフスタジオに就職している。ゴルフ関連とはいえ、そこは仕事なので、当然ながら十分な練習時間は取れない。プロテスト合格という目標にとっては、明らかにマイナスになる決断だ。

「もう二十歳だったし、自立しないとなと思って」と本人が言うように、ゴルフの成績を出すことの前に、他人を当てにせず、自分で働いて生きていきたいという、地に足のついた価値観があるのだ。

筆者撮影
多くのアマチュア選手がプロテスト合格を目指す中、平塚選手からは経済的な自立を意識する言葉が多く聞かれた

「普通の生活の中にゴルフがある」

プロゴルファーになる選手、そしてそれを目指している選手の多くは、ジュニア時代から生活をゴルフに全振りして、突き詰めて取り組んでいる。

平塚もプロテスト合格を目指す気持ちに偽りはないが、そうした他の選手達と比較すると、どうしてもどこかその目標にも冷めているように見える。

「昔から、ゴルフのために何かを犠牲にすることが、凄く嫌だったんですよ。高校も通信にしようかという話もあったんですけど、ゴルフ一辺倒の生活になったら、絶対、私、ゴルフ嫌いになるなと。

普通の生活の中にゴルフがあるだけだから。私、趣味が結構いっぱいあるタイプなので、それを我慢しないとプロになれないよっていうんだったら、別にゴルフのために生きていくっていうほど好きではないんです。正直な話。

もちろんゴルフしてて、楽しいこともいっぱいあるし、めっちゃ感謝してるけど、自分の全てを投げうってまでするものではないかな。そんなこと言ってるから、合格しないんだって言われるかもしれないけど」