萩本欽一の番組優先主義がもたらした成果

太田省一『萩本欽一 昭和をつくった男』(ちくま新書)

曲のヒットは、番組にも多大な恩恵をもたらした。「ハイスクールララバイ」がオリコンシングルチャート1位を獲得した翌週に、『欽ドン!』は初めて視聴率30%の大台を突破した。歌番組でイモ欽トリオを見てファンになった若い世代にも、番組を見るひとが増えたのである。

バラエティ番組の出演者が出すレコードを「企画もの」と呼んだりするが、その言いかたにはちょっとした軽いお遊び、つまり本気ではないというニュアンスが込められている。だが「ハイスクールララバイ」は、「企画もの」でありながらその域をはるかに超えていた。

松本隆や細野晴臣といった一流の音楽スタッフがかかわったということもあるが、元をただせば萩本欽一の“番組優先主義”が、単なる曲のヒットだけで終わらせない相乗効果を生んでいた。その点がまず、萩本のアイドルプロデューサーとしての特色だろう。

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