ボケ数勝負がしたければ速度以外の工夫が要る

こういうタイプの漫才は、ネタ時間が短いからできるともいえます。M-1みたいに4分間の勝負ならば逃げ切ることができますが、5分とか10分となると難しい。やる側もそんなに息がもたないし、何よりネタ時間が長くなればなるほど、お客さんにボケを読まれやすくなってしまうからです。

石田明『答え合わせ』(マガジンハウス新書)

2023年のM-1決勝のときのヤーレンズとさや香、どちらのボケ数のほうが多いかといったら圧倒的にヤーレンズです。

ヤーレンズは「小ぶりなボケの種類と数」で笑いをかき集める。さや香は「振りに時間をかけた少数精鋭のボケ」で笑いをかき集める。全体を通してかき集めた笑いの量は、ひょっとしたら、さや香のほうが上回っていたかもしれません。

ボケの量と質、どちらをとるか。小ぶりなボケを数打つか、それとも練ったボケを少数打つか。どちらのほうが「笑いの総量」は多くなるのか――。

僕は自虐半分、ボケ半分で「質より量で勝負してます」と言っていますけど、少ないボケ数で大きな笑いをとるスタイルをうらやましく思っています。もし、ボケ数で勝負をしたいなら、ただスピードを上げてボケ続けるのではなく、ヤーレンズのように、一工夫が必要な時代やと思います。

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