PHEVではなくハイブリッド車である理由

ところで、ハイブリッドより環境に良いとされ、ガソリンで走ることもできるPHEVの普及がなぜ進まないのかと疑問を感じる方もいるだろう。

PHEVにも致命的な欠点がある。PHEVは「プラグイン」というだけあって充電しなければその環境性能を十分発揮することができないのだ。

もちろんハイブリッドモードで走ることはできるが、重いバッテリーを搭載しているためハイブリッドモードでは通常のハイブリッド車より燃費が悪化してしまうのである。

つまりPHEVを買って意味ある人は自宅での充電が可能という、BEVと同じ条件を満たす人に限られるのだ。

写真=iStock.com/MarioGuti
パリ市内を走る「レクサスES」タクシー(※写真はイメージです)

欧州メーカーの冬の時代は続く…

総合的に考えると、BEVやPHEV、FCEVも少しずつは増えるだろうが、しばらくの間は現状のインフラでもCO2の削減が確実に可能なハイブリッド車が市場のメインを占めることになるだろう。一気にすべてをゼロエミッション化するのは不可能だから、現実に即した最適解を地域やニーズに合わせてマルチで提供していくというトヨタをはじめとする日本メーカーの判断は圧倒的に正しかったのである。

この事実にようやく気がついた欧州メーカーは、これから大変な時期を過ごすことになるだろう。BEVに開発資源を集中すぎた欧州メーカーの多くはまともなハイブリッド技術を持っていないのだ。

現在、トヨタやホンダのハイブリッドに対抗できる性能のハイブリッド技術を市販化できている欧州メーカーはルノーだけで、他社は簡易的な48Vマイルドハイブリッドに留まっている(そのため欧州製PHEVの車種は多いが、ハイブリッドモードの燃費は通常のガソリン車と大差ないものが多い)。

パリモーターショーでは今までBEV一本槍だった中国メーカーも日本メーカーに近いレベルのフルハイブリッド技術を搭載したPHEVを展示していた。これから欧州メーカーがどれだけ巻き返せるか、注目である。

関連記事
ついに「経済大国ドイツ」の空中分解がはじまった…EVシフトで大失敗「大失業時代」を招いたショルツ政権の誤算
トヨタは「テスラ、BYDを倒す準備」ができている…「日本車メーカーのEV逆襲」に必要なたった一つのこと
「鬼滅はもうオワコン」の評価を180度変えた…海外のアニメファンが「歴史的傑作」と大絶賛した神回の内容
「お母さん、ヒグマが私を食べている!」と電話で実況…人を襲わない熊が19歳女性をむさぼり食った恐ろしい理由
中2で「初めてのセックスはどんな状況か」を考えさせる…日本と全然違うカナダの性教育