三食を作るのは「炊事工場」の受刑者

「刑務所の食事」を作るのは炊事工場で働く受刑者たちだ。料理のプロではなく、むしろ不慣れな素人の手によって、数百人から千人以上の胃袋に収まる膨大な量の食事が毎日3度、欠かすことなく用意されている。

汪楠、ほんにかえるプロジェクト『刑務所ごはん』(K&Bパブリッシャーズ)

ただし、その献立を考え、調理工程を組み立てているのは専門の管理栄養士だ。総カロリー量や栄養バランスの計算も管理栄養士が責任をもっておこなっている。予算や食材ばかりでなく、調理機器や調理方法にも大きな制約が課されている環境で、調理経験に乏しい素人でも大量に作ることのできるメニューを考案するというのは、想像するだけで気の遠くなるような仕事だ。

日中の調理では、ときに栄養士の指導が入ることもあるようだ。しかし早朝4時台に起床して作業を開始し、遅くとも7時頃には配食を終えてしまわなければならない朝食の準備は、炊場の受刑者たちに委ねられている。味噌汁を除く副菜は、ほぼすべて既製の加工食品やふりかけ類などの組み合わせとなっているようだが、それも無理からぬことだろう。納豆や漬物類も朝食の定番だ。

本記事冒頭の写真は、受刑者たちから寄せられた手紙や献立表にもとづき再現した、ある日の朝食のイメージだ。味噌汁には一種類ないし二種類の具材が使われるが、これは施設によって方針が異なるようだ。ただし、少量の味噌を湯で溶いた程度の薄味という点だけは、多くの施設で変わらない。