昼食はボリュームしっかり

せわしなく朝食を終え、平日であれば出房して刑務作業の工場へと移動する。作業開始は7時50分だ(※これは夏季処遇であり、冬場は全体的に時間が若干早まる)。ただし、刑務所の食事を用意する炊事工場の受刑者は早朝4時過ぎには起床し、朝食の支度に取りかかるという。

わずかな人数で、数百名から千名ほどの受刑者の食事を整えるのだから力のいる大仕事だ。時間までに全受刑者の配食を間違いなく終えてしまわなければならない。熱を使う調理場の夏場の暑さは苛酷を極め、冬場の早朝は凍てつく寒さだ。「炊場すいじょうに回されるのは、若くて真面目な受刑者であることが多い」と前出の男性は語る。

12時の昼食はそれぞれの工場に配られる。パンや麺類が出されることもあり、副菜のバリエーションも豊富で、ボリュームも充実している。昼食が一番の楽しみという受刑者は多い。

昼食後の短い休憩ののち12時半には刑務作業が再開する。14時半から10分の休憩をはさみ、作業終了は16時半だ。

夕食は16時50分、夜の空腹がつらい

まだ日の残る16時50分に夕食となるが、それからの夜は長く、空腹に襲われる。食料を隠し持つことは許されていない。もし見つかれば懲罰の対象となってしまう。

夕食の再現例(左)。フライは冷凍食品をスチームで解凍したものが基本で、サクサク感はない。昼食(右)はもっともバリエーションが多く、写真の再現例のように麺類が出されることもある。(写真=名和真紀子 料理=田内しょうこ)

懲役を終えて外の社会に出たなら食べたいものがたくさんある。長期の受刑者には特にそのような思いが強まる。

無期懲役に服して25年目を迎えた受刑者は、「私がここに来た当時は今よりも断然“味が濃くて”美味しかった!」と言って在りし日を懐かしむ。今と比べれば味付けもしっかりとしていて量も多く、料理のバリエーションも豊富で、満足感が味わえた。しかし、今日ではそのようなことも減ってしまった。食中毒などが起きるたびに規制が加わり、かれこれ10年くらい生の野菜や果物は食べた記憶がないと嘆く声もある。