83年大丸梅田店オープン1期生として入社、その後、世界屈指のビジネススクールと呼ばれるノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院に留学、マーケティング室長などを経て10年に大丸東京店店長に就任した藤野晴由に、東京店の店づくりについて聞いた。
「就任したとき感じたのは、東京では、大丸が百貨店として認知されていないということでした。関西での大丸のブランドバリューとの差を痛切に感じました」
大丸といえば、心斎橋に本店を置き、関西を中心に事業展開してきた百貨店である。
藤野は、顧客にとって一番大事なものは何か? と考え、マーケティング室長時代、さまざまな実地調査を繰り返した。大丸の関西4店舗を例に挙げると、梅田店は、ファッションビルを卒業し、ワンランク上のブランドを求めるOLの客が多い。神戸店では周辺の富裕層から絶大な支持を得ている。心斎橋店は古くからの外商顧客を数多く抱えている。京都は地域から徒歩や自転車で気軽に来られる店として親しまれている。ひとくくりに大丸といっても、同じ関西地域の4店舗だけでもここまで客層が違ってくるのだ。
大丸東京店がリニューアルの際、東急ハンズや石井スポーツといった大型専門店がテナントとして同時にオープンした。店内を歩くとコスメ雑貨やアウトドアグッズを買いにきた若者を多く見る。若者だけではない。ラグジュアリーブランド目当ての中高年や、手土産を買うビジネスマンなど、あらゆる年代の客層が買い物を楽しんでいる。東京店から徒歩圏内には、老舗の百貨店も店を構えているが、店内はどちらかといえば年配の人が多い。筆者は買い物客の動向を同時刻に1時間ずつ観察したが、現金で購入する客の多い大丸東京店に対して、その老舗は百貨店のカードを使う比率が高い。徒歩圏内の立地だが、いろいろな客の出入りする大丸より固定客が多い老舗といった印象を受けた。