「抵抗勢力」と闘っているフリをして常に最大派閥だった小泉

なお、小泉はマスコミの扱い方も天才的でしたが、根っからの派閥政治家でもあります。小泉が「私に反対する勢力は抵抗勢力だ!」と訴えた時、国民は巨大な反対派に小泉が立ち向かっていると勘違いして熱烈に支持しましたが、小泉内閣5年の在任中で与党内の小泉の支持勢力が過半数を切ったことは一度もありません。

写真=時事通信フォト
IT戦略本部会合の小泉純一郎首相(中央)、竹中平蔵経済財政相兼IT担当相(左)。首相官邸、2001年5月31日

こういうところが、政局の天才と言われた所以です。小著『検証 財務省の近現代史』(光文社新書、2012年)を参照。小泉のキャッチフレーズ「自民党をぶっ壊す」を覚えている人も多いでしょう。しかし、これは小泉の専売特許ではありません。田中角栄すら言っていたことです。「文句があるなら、自民党を政権から引きずりおろしてください」と訴えていました。どうせ国民はそんなことをできないと思って言っているのですが、演説名人と言われた角さんが熱を込めて言うと、本気度が伝わったものでした。

ちなみに三木は、話し合いで椎名悦三郎副総裁の裁定で田中の後継を選ぼうとした際の総裁選で、「僕を総裁にしないと自民党をぶっ壊す(意訳)」と脅したそうです。色んな文献で表現は違うのですが、共通しているのはいちいちネチネチしていて無駄に理屈っぽいけどエゴ丸出しの脅迫にすぎないこと。石破茂さん、総裁選に負けても負けても最後は勝った三木さんを見習っているようですが、反面教師にしたほうがいい。

小泉は今から縷々るる見ていくように、田中政治の手法を否定しながらも、三木政治を反面教師にしています。

自民党は「普通の人の集まり」だから国民政党になった

さて、本質です。「なぜ自民党をぶっ壊す」が、国民にバカ受けしたのか。自民党が日本人の縮図となる、普通の人の集まりだからです。

かつての社会党や民社党は労働組合に支持されていました。立憲民主党や国民民主党の前身です。

公明党の支持母体は創価学会で、宗教団体。共産党は宗教を否定しながらも、共産主義という疑似宗教の信奉者の集団です。共産党と自民党は政界再編に関わらず残りましたし、公明党は一時的になくなりましたが、残りました。

公明党や共産党は組織力を持つから残るのですが、自民党は?

確かに全国津々浦々まで支部を持ち巨大な組織なのですが、“戦闘力”で言えば公明共産の比ではない(両党とも、最近は怪しいですが)。自民党が生き残ってこられたのは、圧倒的多数の普通の日本国民の支持を集める大衆政党であり続けたからです。国民政党と言ってもよい。