日々の体調を意識して生活習慣を見直す

かかりつけ医にできることはといえば、無症状のがんを見つけるために検査をすることではなく、患者さんのちょっとした体調の変化に気づき、早期発見につなげることです。がんの初期症状として、たとえば体重減少、食欲不振、倦怠感、咳や痰、嚥下困難、不正出血、便の性状や排便習慣の変化などが挙げられます。

受診のたびにこれらの項目を全部確認するのは現実的ではありませんが、私は診察のたびに少しずつ項目を入れ替えながら患者さんにお聞きするようにしています。患者さん側も、何かいつもと違う症状があれば、遠慮せず医師に伝えていただければ助かります。患者さんが気になっていることを気軽にご相談していただけるような関係を作ることも、かかりつけ医の重要な仕事の一つです。

また、がん予防の観点から、生活習慣についての助言もできます。例えば、バランスの取れた食事や適度な運動を推奨したり、喫煙者には禁煙外来を紹介したりすることです。こうした健康的な生活スタイルは、がん予防のためだけでなく、慢性疾患の管理のためにも重要です。適切な生活習慣を身につけることが、全身的な健康維持につながることでしょう。

早期発見には5つの「がん検診」が重要

一方、無症状のがんを早期発見したいのであれば、がん検診を受けましょう。胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんの5種類のがん検診については、がん死亡率を減らす科学的根拠があり、厚生労働省が推奨しています。それぞれ適切な検査項目、対象者、受診間隔があります(図表1)。

厚生労働省ウェブサイト「がん検診」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html)より引用

がん検診は保険診療の対象外ですが、多くの自治体で公費補助があり、少ない自己負担で受けられます。保険診療を行っているかかりつけ医は、無症状のがんを発見するための検査はできませんが、推奨されるがん検診を受けるようにアドバイスすることはできます。