民間の介護保険に加入できればいいが…

そもそも当初所得において年齢を重ねるにつれ格差が拡大しているということもあって、生活保護の「捕捉率」が低いということは高齢者層において格差問題はより深刻であると考える。

結城康博『介護格差』(岩波新書)

そもそも、老後生活で「格差」が生じることは、一部、個人の長年の生き方が大きく影響しているかもしれない。例えば、老後を見据えて民間の介護保険に加入する者が増えつつある。実際、各民間保険会社は「介護保険」の商品化を進めており、これらの実績も増えている。

先の生命保険文化センター資料によれば、民間介護保険及び介護特約の世帯加入率は2021年度16.7%と2009年度13.7%とを比べると増加傾向だ。特に、世帯年収別では「1000万円以上」22.4%、「300万~400万円未満」9.9%と年収があがるほど加入率が高くなる。

社会保障サービスでは充分でないと考える人らが、現役世代のうちから民間保険会社の「介護」「年金」「医療」保険に加入し老後生活に備えているのであろう。しかし、このような民間保険に加入できるのは一部である。今後、民間保険にも頼れる高齢者と、社会保険しか利用できない人たちとで二極化し、「介護格差」問題は深刻化していくであろう。

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