「ミドル・シニア層」の賃金は上がっていない

一方、賃金上昇の恩恵をあまり受けていない層も存在する。

その代表と言えるのがいわゆる「ロスジェネ世代」「就職氷河期世代」だ。

図表2を見れば分かる通り、30年ぶりの賃上げが実現した昨年度も、大企業の30代後半~50代前半、いわゆる「ミドル・シニア層」の賃金は上がっていない。

この世代は「第2次ベビーブーマー世代」を含むため、日本の人口のボリュームゾーンとなっており、企業から見て人件費削減のターゲットにされやすい。

また、20代の賃上げ費用を確保するために、氷河期世代の賃金を削っている企業もあると考えられる。

30代後半~50代前半の「ミドル・シニア層」は、もともと相対的に賃金水準が高く、かつ、転職しにくく労働市場の流動性が低い年代のため、賃金が上昇しにくいという理由もある。

ほか、この世代は管理職として労働組合の非組合員になっている場合が多く、その点でも賃金上昇の恩恵を受けにくいと考えられる。

このようにロスジェネ世代、氷河期世代は、もともと賃金が上昇しにくい年代にあたり、今後もなかなか賃上げが進まないことも予想される。

日本全体の実質賃金がプラスになったくらいでは、氷河期世代の賃金はさほど増えないのではないだろうか。

大企業より中小企業のほうが賃上げしている

よく「大企業は賃上げしているが、中小企業は賃上げしていない」と言われることがあるが、これは事実とは異なる。

むしろ大企業ほど賃上げしていないのが実態だ。

企業規模別にみると、小企業の賃上げ率が前年比+3.3%、中企業が+2.8%の一方で、大企業は同▲0.7%と、賃上げどころか減少している。

中小企業のほうが人手不足に直面しているため、積極的に賃上げして人材をつなぎ留めていると考えられる。