高齢になると深い眠りが難しくなる

第3段階になると、さらに眠りが深くなります。脳波は2段階目よりも、もっとゆっくりになります。この眠りに入ると、ちょっとやそっとの物音では目覚めません。

「目覚ましをかけておいても目が覚めなかった」という、若いころを懐かしく思い出す方もおられるでしょう。高齢になると、この「第3段階の眠り」に到達することが難しくなります。

第1段階と第2段階を行ったり来たりしているので、ちょっとした物音でも、すぐに目が覚めてしまいます。さらには、一度目が覚めてしまうと、そのあと寝つけないこともよくあります。

すると、「健康に影響するのではないか」「このままどんどん体が衰弱するのではないか」と、非常に心配する人がいます。

専門家のなかには、「眠るにも体力が必要で、年をとると体力が落ちるから眠れないのだ」と述べる人がいますが、必ずしもそうとはかぎりません。

では、なぜなのでしょうか?

出典=『20歳若返る習慣

浅い眠りが「生き残りに有利」な、もっともな理由

高齢者の眠りが浅くなるのは、実は「自己防衛本能」だという説を唱えている生物学者もいます。

高齢になると瞬発力が衰えて動きも緩慢になるため、急に外敵に襲われるなどして身の危険が迫ったとしても、俊敏に反応してすぐに反撃をしかけたり、速く走って逃げたりすることができません。

人類の歴史を振り返れば、寝ている最中に自然災害や、外敵や野獣の侵入に見舞われる可能性は多かったでしょう。

そんな環境下で、体力が衰えて動きが遅くなっても生き延びられるように、年をとるほどに、ちょっとした物音でも目が覚めるという習性が、自然に発達していったのではないかと推測されています。

もしもこの説が正しいのなら、年をとるにつれて眠りが浅くなるのは、至極自然なことであり、むしろ健康である証拠。心配する必要などまったくない、ということになります。

実際、高齢者の眠りが、「ゆさぶっても起きない」ほど深い場合は、かえって危険です。脳に異常がある疑いや脳梗塞になるリスク、認知症の兆しも考えられます。