「採用されたとき、すごく嬉しくて」

奥村乃絵さん(釜石高校1年)。

奥村乃絵(おくむら・のえ)さんは、岩手県立釜石高等学校1年生。現時点での将来の志望は「大雑把なのしか決まっていないんですけど」とのこと。他の回でも書いたが、それは高校生にとって(特に1年生ならば、なお)ふつうのことだとこちらは考えている。職業観がしだいにかたちを成していく「途上」のことばを奥村さんに聞かせてもらおう。

「『TOMODACHI〜』でアメリカに行って海外に興味が出たことと、自分で考えを出して、それを伝えて、採用してもらうという体験をして、自分のアイディアを人に伝えて採用してもらうということ、すごくいいなあと思ったので、そういうふうな仕事もやってみたいし、英語を使って海外にも関わりたいと思いました。考えてるのは外資系企業とか。自分でアイディアを出しつつ、英語を使って、自分でいろいろ開いていく仕事がやりたいなと思いました」

このとき奥村さんは「プレゼンテーション」ということばを使っていない。自分で考えを出して、伝えて、採用してもらう。奥村さんのことばは、プレゼンテーションを正しく定義している。

奥村さんが話してくれたものは、「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」3週間のほぼ毎日、午前中を使っておこなわれた「Y-Plan」と呼ばれる課題発見・解決プログラムだ。高校生たちはバークレーの街をフィールドワークし、自分たちの町——すなわち被災地に活かせるヒントを、いくつかのチームにわかれて考えた。

「自分たちで街を歩いて回って見たこととかを元に、みんなで話し合って改善点とかを考えて、アイディアを出し合ったんです。そのときに自分が出したアイディアを『いいね』って言われて採用されたとき、すごく嬉しくて、ああ、こういうこと、やりたいなと思ったし。あと、中学校のころから英語を使った仕事を将来はしたいというのもあって」

外資系企業に行くためには、どんな学校に行けばいいと考えていますか。

「欲しいのが、アイディアを出す力とか、構想の力とかだから……あれもやりたい、これもやりたいだから(笑)、びしっと決まっていないんですけど、いろいろ調べて考えているのが、宮城大学の事業構想学部です」

この連載の中で何度か名前が出てきた宮城県の県立大学(現在は公立大学法人)だ。開学は1997(平成9)年。看護、事業構想、食産業の3学部を持つ。学部学生数は約1800名。定員数200名の事業構想学部のウエブサイトには「事業の企画に関する知識や技術を体系的に学び、新しい時代における各種事業を総合的にプロデュースできる人材を育成する日本初の学部です」とある。

1年生はまだそれほど大学の情報を持っていないと思って訊くのですが、宮城大学事業構想学部は、どうやって見つけましたか。

「先生がすごいプレッシャーをかけてきて(笑)。釜高は"受験受験"だから」

ここで再び浦島さんが絶妙の突っ込みを見せる。「1年生からそう言われてもねえ。オープンキャンパスとか、私たち商工は人生で1回も行ったことないのに(笑)、釜高1年の2人は行ってますもん、授業の一環として」。

なるほど。奥村さん、釜高は早目に大学を決めよというプレッシャーがあるのですか。

(明日に続く)

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