A男の母親に警察で話をしてほしいと頼むと、翌日には「警察に行ってきた」という連絡があった。

A男親子は警察で使用していたケータイの機種番号とシリアルナンバーを提示し、水没してAppleに回収されるまでの使用期間も伝えたという。盗撮画像を送信したLINEトークルームにいたメンバーの名前も伝え、そのメンバーにも警察に行ってもらうよう話してもらうことになった。

A男の母は、A男が1人で行った犯行ではないことを強調する様子もあったが、すぐに警察に行ってくれたことには誠意を感じた。あとは盗撮現場にいた他の男子生徒たちから謝罪があれば、それで幕引きになるだろうと思っていた。

しかし、他の男子生徒たちの反応は極めて鈍いものだった。理沙と一緒に盗撮された女子の保護者たちとも相談し、「バレー部の男子部員たちに盗撮事件について聞き取りをして欲しい」という依頼のメールを保護者たちに送信した。

「風呂場で全員集合写真を撮る」という証言の嘘が判明

すると理沙の同学年の男子部員の保護者たちはそれぞれの家庭で子どもたちに話を聞き、個別にメールで事情説明と誠意ある謝罪が送られてきた。最初は「画像を見ていない」と言っていた部員が実はLINEグループで見ていたり、当初A男がしていた「風呂場で全員の集合写真を撮る」という証言が嘘であったこともわかってきた。

それでも、保護者が自分の子と根気よく向き合い、丁寧に聞き取りをしてくれたことで事実が明らかになっていく手ごたえは確かにあった。

同時に、写真は湯気やブレで理沙たちの姿がはっきりとは写っていなかったこと、撮影したA男が、合宿の終盤にはLINEグループのメンバーに写真を削除して欲しいと頼んでいたことなどもわかった。

しかし一方で、A男の同級生、つまり理沙の1学年下の男子部員の保護者からは一切返信がなかった。

そこで再び、A男と同じ学年の部長の保護者に改めて事情説明を依頼するメールを送った。当時の文面を要約すると以下のようなものだった。

「ご存知の方もいらっしゃると思いますが、盗撮事件は主に△期(A男の学年)のお子さんたちの中で起こったことです。現時点で△期の保護者の皆さんはお1人もお子さんへの聞き取りとご報告にご協力くださらない状況をただただ苦しく、悔しく感じております。同じ子どもを持つ親として、同じ女性として、少しでも被害者やその親の心の痛みをご理解くださるのならご協力いただけませんでしょうか」