「ビッくらポン!」誕生のきっかけ

くら寿司の海外店舗は基本的に日本で確立した回転寿司のシステムを踏襲しており、それが従来の「寿司」とは異なる、カジュアルに食事できてエンタメ性も内包した「回転寿司」として人気を博している。

例えば、くら寿司の大きな特徴である「ビッくらポン!」はそのひとつだ。

ビッくらポン!は2000年に導入したシステムで、卓上のポケットに皿を入れていくと、5皿に一度ミニゲームができ、当たりが出ると景品がもらえるというもの。生まれたきっかけは、食事後のテーブルを片付ける際の効率化と、「食事していて、積み上がった皿を他の人に見られるのが恥ずかしい」という女性客の声をきっかけに1996年に登場した「水回収システム」だ。

撮影=プレジデントオンライン編集部
ただ皿を回収するだけでは終わらないのがくら寿司

「社長の田中が、店舗で子どものお客さまが皿をポケットに入れているところを見て、そこで何かゲームができないか、と考えたことからビッくらポン!のアイデアが生まれました」(辻氏、以下同)

当初、ビッくらポン!はオリジナルの景品を用意していたが、転機になったのは2005年。映画『釣りバカ日誌16』がくら寿司の店舗で撮影をした縁から、景品の中にペア鑑賞チケットと引き換えられる当たり券を入れた。

その後、プロ野球チームや人気アニメとのコラボが増えていき、今では景品関連のコストとして、年間で10億円以上もかかっているという。

もっとも反響があったコンテンツとは

これまでコラボしたコンテンツは40件を超すという。その中で最も反響があったのはどのIPだったのか。

「ビッくらポン!史上過去最高の反響は、コラボ2回目のちいかわ(初回は23年2月)だと思います。コラボしたのは2024年3月8日~31日で、この月の既存店の昨年対比は123%となっています。もちろん、売り上げに関しては、春休みや、インバウンド回復など、複数の要因があります」(辻氏)

くら寿司HP IRニュース月次地報告書より

そんなビッくらポン!、日本同様、海外店舗でも大人気だという。だが、米国店舗で導入する際には壁にぶち当たったこともあった。「ギャンブル」とみなされてしまったのだ。

「必ず景品が当たるか分からない、という点などからギャンブルとみなされてしまい、規制に対応するには申請する必要があったのです。ただ、多大なコストと手間がかかることから、15皿に1回、必ず当たるシステムにしてギャンブルとみなされないようにしました。

そのため、米国のくら寿司ではミニゲームがストーリー仕立てのようになっており『あと何回やれば当たる』といったアナウンスをしています」

ちなみに、米国や台湾、中国のビッくらポン!の景品は、最近では現地IPとのコラボも増えつつあるというが、ほとんどは日本と変わらずアニメ作品とのコラボがメインだという。

撮影=プレジデントオンライン編集部
ビッくらポン!のあたり画面。アニメーションはくら寿司オリジナルだ