会ったこともない人たちに叩かれるようになった

でもね、それはすべてテレビがよかった頃の話。ネットの時代に入って、会ったこともない人たちに叩かれるようになりました。私のことをハラスメントだって言うわけです。週刊誌も事実をきちんと伝えてくれたらいいですけど、そうじゃない。なんだかんだで、四半世紀やってきた番組を降板することになりましたからね。落ち込みました。関西テレビの看板番組だったんですよ。それがきちんとした話し合いもなく、あっさりと切られたわけです。

4年前でしたか。とにかく腹が立ちましたね。関西テレビからいただいたトロフィーやらなんやら家でがんがん叩き割りました。年間視聴率ナンバーワンの盾とか真っ二つです。

そのときに思ったんです。あぁ、私は負けたんだなと。さすがに、ガクッときました。時代に私の芸風が合わないんやなって。そもそも、私の生き方と時代が合わなくなってきているんだってつくづく思ったわけです。同じ時期に愛犬も亡くなって、どん底ですわ。14歳からよう働いたな、あんたもよう頑張った、もうええんやないかって、自分で自分を慰める人生あきらめモードに突入です。あのときは本気で引退を考えましたね。

死にたいとも思いました。死にたくても、人間、そう簡単に死ねるもんやないんですよね。でも、ネットを見ると、なぜか死んでるんです、私。上沼恵美子の死因って検索すると、出てくるわけです。えっ、私の死因、なんやろうって見ましたけどね(笑)。

でも、死にたいっていうのは失礼な話やって、ハッと気づいたんです。最近ね、若いときから一緒に仕事をしてきた先輩や仲間がどんどん天国へと旅立っていくんです。悲しいことです。私が長いことNHKで出演させてもらっていた「バラエティー生活笑百科」のメンバーの訃報も続いてね。笑福亭仁鶴さん、今くるよさん、キダ・タローさん……。

わかってはいても、命って限りがあるんですよ。生きているんやから、ちゃんとせなあかんって思い直すようになって、1年くらい前から目が覚めたといいますか、足元をしっかり見て歩いていこうと再出発です。関西テレビへの恨みつらみを晴らさずにおくものかって気になっています。はははは。

趣味と仕事では「ビールの味」が全然違う

結局、私が歩き出すってことは仕事をするってことなんです。働くことの尊さなんて、これっぽっちも感じないで生きてきて、挫折といいますか、負けを知ったことで、仕事に立ち戻ったってのが、また不思議なものです。

仕事って、臓器でいうたら心臓ですよ。心臓が動くから手も足も口も動くし、頭も回転する。料理でいうたら調味料。調味料がなければ、味も素っ気もない料理になるわけです。仕事をしなければ、人生が面白味のないものになるってことです。