炭酸飲料の嚥下改善効果

最近の研究で、炭酸飲料中の炭酸には、嚥下改善効果があることがわかっている。

東京医科歯科大学の戸原玄教授によると、

「近年、炭酸飲料は水分と比較し、少量で嚥下反射を惹起させることが可能であること、さらに炭酸飲料摂取時のほうが、嚥下反射惹起時間が短縮することが報告されています。これは、炭酸飲料の発泡性が咽頭粘膜を刺激することで、嚥下運動を促進するためであるとされており、炭酸飲料には嚥下改善効果があります」

という。

高齢化すると嚥下する力が弱くなる、うまく飲み込めなくなる理由としては、主に以下の4点が挙げられる。

①手や足と同じように、口や喉の筋肉も弱っていくから
②暑さ寒さを感じる感覚と同じように、味覚や痛覚などの刺激を受け取る反応も鈍くなるから
③呼吸が浅くなるから
④姿勢が猫背になるから

食べ物で誤嚥する場合は、歯が悪くなっているため、うまく噛めなくて大きいまま喉に入ってしまうケースと、唾液の分泌が少なくなり、パサつくせいで支えてしまうというケースがある。

一方、飲み物で誤嚥する場合は、液体が喉を通るスピードと飲み込むタイミングが合わず、気管に入ってしまうというケースが多い。

そこでとろみ剤を使い、喉を通るスピードをゆっくりにして、タイミングを合わせるわけだ。

戸原教授によると、「最近せやすくなったな」と思ったら、トマトジュースやネクターくらいのとろみをつけてあげると、咽せることが減る場合が多いという。

介護をする人も介護を受ける人も

「液体とろみ」の売り上げは、2021年の発売開始以来、年110%の伸び率で右肩上がりに上昇している。

「コスト面で考えると、液体のとろみ剤は割高になってしまうので、日常的に水分補給する水やお茶の場合はコスパのいい粉末を使っていただき、とろみがつきづらいものには液体とろみ剤を使うといったように使い分けをするとよいかと思います。粉末と液体が共存しながら市場を大きくしていきたいという思いが強いですね」(町田)

筆者はこれまで在宅介護をしている人、80人ほどに取材してきたが、その誰もが1分1秒でも惜しい忙しい毎日を送っていた。この「液体とろみ」があれば、例えば家族全員分の食事を作ってから、1人分だけ別に片栗粉を加えてとろみをつけた料理を作っていた場合でも、作った料理を一人分だけ取り分け、そこに混ぜるだけでよいので時間も手間も省ける。介護を受けている側の人にとっても、他の家族と同じものが食べられるのはうれしいに違いない。

「液体とろみ」のサイトには、これをかけた唐揚げや豚汁、煮物やざるそば、チャーハンや焼き魚に使ったレシピが掲載されているので、参考にしてほしい。

写真提供=ピジョン
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