鬼滅と共に歩んだアニメ制作会社
手掛けるアニメ制作会社のufotable(ユーフォーテーブル)にとって、鬼滅はもはや社運を賭けた渾身の一作である。2000年設立の同社は『Fate』シリーズなどで一躍注目を集め、同業のAniplex(アニプレックス)とともに大きくなっていった。
2017年7~9月『活撃 刀剣乱舞』を最後に、ufotableは『鬼滅の刃』以外のアニメ作品は手掛けていない。
第1期『鬼滅の刃 竈門炭治郎 立志編』(26話、2019年4~9月)、第2期『無限列車編』(7話、2021年10~11月)、第3期『遊郭編』(11話、2021年12月~22年2月)、第4期『刀鍛冶の里編』(11話、23年4~6月)、第5期『柱稽古編』(8話、24年5~6月)、途中で日本映画史を塗り替えた『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』も含め、この7年近くもの期間を300人超いる大規模なアニメ制作会社の全精力がこの鬼滅に捧げられてきた。
評価が一変した第8話
今回の「柱稽古編」は、敵である鬼とのメインストーリー展開もなく、バトルも少なく、正直滑り出しからの評判が良かったとは言えない。
欧米ファンがメインのMALでも「俺たちは一体何を見させられているんだ」「漫画読者としてすでに90%はルーティン、10%の何か新しいものを期待して見た」という表現がレビュー欄に踊っており、漫画には描かれないディティールを映像化した点では評価されてしかるべきだが「7話になるころには退屈を感じるようになっていた」など、シーズン全体への評価は辛めである。
だがすべては8話目に覆る。鬼殺隊の長・産屋敷耀哉と鬼の総領・鬼舞辻無惨が対峙し、爆発とともに無惨が柱たちを無限城にいざなう最終決戦のバトル導入部。
命を賭して無惨と静かな戦いに挑んだ耀哉とその妻・あまね、子供2人のたたずまいと覚悟、ゆらめくような炎が人類の怒りを表現するがごとく無惨を巻き込んで爆発するシーン、そして集結した柱たちが一瞬魅せる剣技・技が折り重なる迫力。
8話目は、刮目せざるをえない次元のクオリティ表現で、セリフもストーリーもすべて把握している人間ですら、固唾をのんで目が離せなくなるような「説得力」に溢れていた。
「まさにその10%に喜びと希望で涙腺をあふれさせられた」「このシーズンがベストだったとは言えないが、終局に向かった導入部として次シーズンへの期待値を最大限に高めてくれた」など絶賛が並ぶ。