自前の名刺
スパリゾートハワイアンズで行われた HIS 33期方針発表会の壇上で、いわき市のアピールを行った高校生は8人。全員が「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」参加者で、いわきからの参加者で結成したチーム「Youth Iwaki」のメンバーでもある。高校生に「組織形態は」と訊くのも性急かもしれないが、「Youth Iwaki のリーダーは明確には決まっていませんが、TOMOTRA のリーダーは俺と(白岩)春奈です!」と具体的な返事をくれた高校生がいる。
芹澤崚(せりざわ・りょう)さんは福島県立磐城高等学校普通科2年生。福島県を代表する名門進学校だ。卒業生には情報誌「ぴあ」創業者の矢内廣や、指揮者の"コバケン"こと小林研一郎、そして『「フクシマ」論』を書いた社会学者の開沼博がいる。芹澤さんはいわき市立中央台南中学校卒。平と小名浜の境にある新興住宅地の中にある学校だ。お父さんは東京電力で働いている。取材が始まる前、芹澤さんはこちらに名刺を渡してくれた。
今回の取材で、初めて高校生から印刷された名刺をもらいました。
「駐日大使公邸でレセプションの際に多くの方々から名刺を戴いたんですけど、自分は用意してなくて、後悔したからです(笑)」
昨年9月22日、駐日合州国大使公邸で「TOMODACHIサマー2012セレブレーション」と題したイベントが行われ、芹澤さんも招待された。東日本大震災の復興支援活動「TOMODACHI」は、合州国政府と公益財団法人米日カウンシル-ジャパンが主導し、日本政府と日米企業や団体、個人が資金や実務の支援を行っている。ソフトバンクはその中の1社であり、同社がスポンサードしたものが「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」だ。同社以外にも日本コカ・コーラや三菱商事、武田薬品工業、トヨタ自動車などが支援企業となっている。この日のレセプションでは、日本コカ・コーラから「TOMODACHIサマー2013」「同2014」の資金援助倍増が発表されている。
芹澤さんの将来の志望は旅客機のパイロットだ。
「6歳のとき、シンガポールへ旅行に行ったときにパイロットになりたいと思ったんです。あと、人生の中でやりたいこともいっぱいあって、留学もずっとしたいって考えてたので、今回『TOMODACHI~』であっちへ行って、自分と同じパイロットになるって目的で留学してる人に会うこともできました。その人にいろいろ話を聞いたら、その人が通っているディアブロ・バレー・カレッジ (Diablo Valley College)っていうコミュニティ・カレッジに2年間通って、3年生からアメリカの航空大学に編入するという進路を目指せるということを知って、これなら留学もできるし、パイロットになるための近道でもあると思って、高校卒業したらもう、そっちのほうに留学しようと考えています」
具体的ですね。
「自分は、なるべく具体的にって考えて生きてきました。具体的に明確な道を複数(自分の目の前に)出さずに、『絶対、こうすれば、こうなるだろう』みたいな変な自信持っちゃうと、失敗したときに『そのあとどうしよう』ってなっちゃうことがあるんで……。高校入ったころは法政大学とか桜美林とか、いろいろ探していたんですけど」
1931(昭和6)年、学生が操縦する複葉プロペラ機「青年日本号」での訪欧飛行に成功した航空部以来の歴史を持つ法政大学には、理工学部機械工学科に航空操縦学専修がある。フライト・オペレーション(パイロット養成)コースを持つ桜美林大学ビジネスマネジメント学群アビエーションマネジメント学類は2008(平成20)年に創設されている。つまり国内に道がないわけではない。それでも合州国で学びたいと思う理由は何ですか。
(明日に続く)