シギント情報は国家の最高機密

【茂田】また、シギントの情報プロダクト(報告)は、「シングル・ソース・インテリジェンス」です。シギントから得られた素材を基に情報報告を作成します。基本的にシギント情報のみに基づく情報報告なので「シングル・ソース(単一の諜報源)」と言うのです。

情報報告は、大統領をはじめ政府高官その他のインテリジェンス消費者に配布されます。米国でも、NSA発足直後は、NSAにシギント情報を情報プロダクトとして配布を認めるかどうか、「オール・ソース・インテリジェンス」の素材情報として使えば良いではないか、という争いがあったのですが、独立した情報プロダクト「シングル・ソース・インテリジェンス」として消費者への配布を認めることで決着が着きました。

シギント情報には極めて重要なものがありますし、また、速報性に優れた情報が大量にあります。独立した情報プロダクトとして配布を認めないと、シギントの良さが活かされないからです。

他方、シギント情報は国家の最高機密ですから、その秘密区分は、米国では基本的に全て「機密」(TOP SECRET)です。ヒューミント情報やイミント情報は、基本的に「極秘」(SECRET)ですから、それだけシギントの秘匿性が重要視されているのです。

私は主としてNSAに関心があるので研究しているわけですが、研究すればするほど素晴らしいシステムだなと思います。合理的です。

写真=iStock.com/NicoElNino
※写真はイメージです

地図にあらゆるデータを紐付けようとしている

【茂田】三つ目のイミント・画像諜報ですが、現在アメリカはこれをレベルアップさせて「ジオイント(地理空間諜報)」と呼んでいます。

NGA(National Geospatial-Intelligence Agency、国家地理空間諜報庁)が行っているジオイントは、これまでの画像情報にプラスして、地球の地理環境、要は三次元座標の地図に全部盛り込んで、様々な情報を地図上にデータとして紐付けるインテリジェンスです。

【江崎】それは、二次元の画像情報を三次元にして、世界中の地理情報を全部、リアルに把握しているということなのですか。

【茂田】それ以上です。彼らは「マルチ・イント」と呼んでいますが、地図には画像情報以外の、シギント、ヒューミント、マシント、公開情報なども含めて、必要な関連データを全部紐付けるというのが彼らの構想です。

なぜ「マルチ・イント」と呼ぶかというと、CIAの「オール・ソース・インテリジェンス」でもなく、NSAの「シングル・ソース・インテリジェス」でもなく、三次元の地理情報にマルチの多様な情報を紐付けるという意味です。これは戦争する時に一番役立ちます。