人は、なかなか自ら生活レベルを下げることはできません。それでも今回の家賃滞納をきっかけに、この先の人生を考えてもらえたのでしょう。住まいは生きる基盤です。高齢者になれば部屋は借りにくくなってしまいます。そうなる前に、終の住処を確保できたのは、賃借人にとっても幸運だったに違いありません。
やっと肩の荷が下りたのか、心なしか賃借人の顔が明るくなった気がしました。
貯蓄ナシ、国民年金だけでは老後生活は早々に破綻する
50代になると子供が自立し、子育てが一段落するタイミングでしょう。50代は自分の人生の後半を見直す重要な時期なのです。固定費の多くを占める住宅の問題は必ず見直さなければなりません。しかし実際は、日々の生活に追われ、見直さないまま老後に突入し、生活が行き詰まる人が後を絶ちません。
今回紹介した50代夫婦の事例は家賃滞納を繰り返し、貯蓄はほとんどありませんでした。自営の仕事が軌道に乗っていればいいのですが、生活はすでに行き詰り、月5万6000円(平均受給額)ほどの国民年金を受給したとしても老後生活は早々に破綻します。
そのため、生活保護(住宅扶助)の受給を見据えた住み替えが不可欠なのです。住宅扶助には上限が定められており、住宅扶助の上限を超える家賃の物件に居住することはできません(東京23区の場合、単身世帯5万3700円、2世帯6万4000円など)。こうすることで将来、再び引っ越しを余儀なくされる事態を避けることができます。
50歳で人生の後半を考え、貯金を増やす最後のタイミングです。そして60代までには「終の棲家」を見つけなければなりません。それを怠ると、ある日突然住む場所を失う「漂流老人」となりかねないのです。