日本中から助けてくれる仲間が集まった

国内支店と協働し、若手ながら顧客拡大につなげているのが箕田一勇也だ。彼は入社から一度も異動がなく、人生において海外経験もなかったため、初の異動である大和証券シンガポールへの転勤に当初は苦労していた。そして、海外生活を立ち上げているさなかにも富裕層顧客への対応に追われた。だが、助けてくれる仲間がいた。

全国の支店にいる仲間たちからの電話が鳴り止まなかったのである。

撮影=永見亜弓
初の転勤がシンガポールとなった箕田さん。慣れない海外生活に苦労していたが、国内支店の仲間たちとの情報交換で顧客を増やしている

彼は言う。

「シンガポールでの生活が始まってから、全国の仲間が連絡してきてくれたんです。全国の優績者(優秀成績者)懇親会などをきっかけに知り合った同僚から、その友人へ。さらにその友人から次の友人へ、紹介が広がっていきました。

松山支店にいる後輩、銀座支店の同期、大分支店にいる先輩……、千葉のうすい支店営業時代に知り合った元ライバルたちが『ひゅーや、今度こういう人がシンガポールに移住するよ』と教えてくれたんです。

みんな、『ひゅーやがシンガポールに行ったおかげで、シンガポールでどのようなビジネスをしているのか、日本のお客さまにどのようなソリューションが提供できるのか気軽に相談できるようになった』と言ってくれます。なかには、『オレもシンガポールで営業やりたい』って言ってくる人もいます」

1日20kmの距離を自転車で飛び込み営業

大出真之は大和証券YouTubeでシンガポールの紹介動画に登場している。動画には緊張しながら話す大出が映っている。声もやや上ずっている。だが、実際の彼は動画の彼とは違う。笑顔を絶やさず、ジェントルマンそのものだ。

撮影=永見亜弓
大出さんは2019年、シンガポールのWCSに異動。「結果の差は行動量の差」をモットーに、運用以外の仕事では移住のサポートや子供の学校探し、グルメ情報やゴルフの付き合いまで「尽くして尽くして尽くします」

大出自身は言った。

「自分では営業には向いていないと思うのですけれど。でも向き不向きより前向きに取り組むしかないかな、と。むしろ不向きだから頑張っているところもあります」

大出は新卒で大和証券入社後、6年間、神奈川の厚木支店勤務だった。

「結果の差は行動量の差」と、多い日は1日20キロメートルを自転車で走って飛び込み営業した。

支店勤務の後、2012年、東京のプライベートバンキング部(PB)に異動した。PBは、上場企業経営者といったVIPを主な顧客とする部署である。ここでは顧客に鍛えられた。そして、営業スタイルが変わっていった。

単なる販売からコンサルティングに、コンサルティングからウェルスマネジメントに。決められて指示された商品の販売ではなく、ひとりひとりのニーズに合わせた提案ができるようになった。そして、関心を持ったのが海外でのPB業務である。シンガポールのWCSに異動したのは2019年。