コンプライアンスが社内政治に利用される時代
コンプライアンスが重視される社会になり、どんなに地位や権力がある人物でも、不適切な行為を行うと、容易に地位を追われるようになった。
では、品行方正な人間がトップに立てば、組織も健全なものになるのだろうか。
現実は、そうとは言い難い。コンプライアンスが、社内政治や社内抗争の道具として利用されるという事態も起きているのだ。
現在においては、敵対者や追い落としたい人物の秘密や弱みを探り、内部告発や週刊誌にリークを行ったり、それをほのめかしたりすることで、相手の追い落としを図る――といったことも起こっている。
2019年に日産自動車で起きたカルロス・ゴーン氏の不正追及は、同社の日本人幹部による追い落とし計画によるものと見る向きもある。不適切な行為の告発には、少なからず、社内政治や社内抗争の要素が含まれているのが実態だ。
ハラスメント行為や汚職の告発は、企業ガバナンスの強化につながるので、意味のあることではある。しかし、経営者のプライベートな部分まで探られ、追い落としを図られることは、企業経営において、果たして「健全なこと」と言えるのだろうか? 疑問を抱かざるを得ない。
令和のトップに求められる資質
これまでは生存競争に勝利した者には、権力、富(お金)、生殖といった、多くのものを独占する権限が与えられてきた。歴史を見ても、それは世の常であったことがよくわかる。
しかし、現在においては、成功者がこれらを独占することは難しくなっている。それどころか、成功者ほどこうしたことに気を付けないと、足をすくわれて、地位と権力を失ってしまいかねない。
どこかで揺り戻しは来るのかもしれないが、昭和や平成前半のような「ゆるい時代」に戻ることはないだろう。令和時代においては、経営者に限らず、「持てる者」は、仕事面だけでなく、プライベート面でも細心の注意を払い、自身の地位、名誉、富を守らなければならないし、それができることが、トップの資質でもある。