「子ども」ではなく「人生の相棒」として

――『だから声かけ、話し合う』では中学受験をめぐるやりとりのほかにも、3人のお子さんと対話の中で心地いい関係性を探る試みについて書かれています。なぜ本を書こうと考えたのですか。

【西村さん】去年の2月ごろに少子化対策の議論が盛んになったとき、経済的なサポートをいかにするかが話題の中心でした。それを聞いて、ふと「それだけでいいのかな」と違和感を持っていました。

僕は単純に子どもと過ごす時間がおもしろいなと思っています。気づかされることも多いですし、僕にとって子どもは暮らしの中で刺激や発見を教えあう相棒のような存在です。

「こういう視点で見るともっと子育てはおもしろい」と伝えられれば「じゃあ2人目、3人目も考えよう」と思ってもらえることもあるのかな、と思いました。僕の感覚としては、子どもが増えるとどんどん追加コストが減って楽になる。だから「意外と子育てはおもしろいよ」と伝えたかった。

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「こうでなければならない」を疑う

――ソウ・エクスペリエンスは、2012年ごろから子連れ出社を認めるなど先進な働き方をしていますね。

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【西村さん】もともと子育てよりも仕事を優先する働き方に対して違和感はありましたね。特に僕らの親世代は「子どものことは妻任せ」といった考え方を持っている人が多いですよね。そういう時代だったから今批判してもしょうがないのですが、なんか嫌だな、と。

せっかく子どもがいるのだから一緒に時間を過ごしたいし、任せきりというのも違う気がする。だからある程度のエネルギーは注ぎたいと思っていました。

一方で起業はしたし、責任もあるし、単純に結果も出したい。子育ても仕事も、両方がんばりたい。欲張りなのかもしれません。

そういう中で、デジタル機器を活用するなどして利便性を享受することは、決して悪いことじゃない、という思いはありました。

西村琢『だから声かけ、話し合う 親と子の気持ちいい関係をつくる 「やってみた」と「話してみた」』(TOYOKAN BOOKS)

僕は経営者で裁量があったので、子どもがいる社員は会社に一緒に来てもいいという手段を取りました。

――著作の冒頭でも、子育てに対して「気楽に過ごそう」とメッセージしていますね。

【西村さん】「子育てはこうでなければならない」という固定観念に縛られてしまっている親が多いように思います。

僕が常々いろんなことに対して「それって本当に大事?」とは思うタイプということもありますが、もう一歩二歩進んで、角度を変えて考えてみることも大切じゃないかな、と思います。こうした思いを本にまとめたことで、ちょっとでも重たい空気が変わればと願っています。

(聞き手・構成=ライター・市岡ひかり)
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