「無党派」乙武氏に足りない覚悟
東京15区には忘れがたい事例がある。2021年10月の首相指名選挙で、無所属で立憲の会派に属していた柿沢氏が、自民党の岸田文雄総裁(現首相)に投票したことだ。「野党系」として一貫して自民党と戦っていたはずの柿沢氏は、衆院選直前に騙し討ちのように自民党に寝返り、衆院選になだれ込んだ。柿沢氏は無所属で選挙を戦い、勝利するや否や自民党入りした。
正直筆者は、あの「変わり身」は、その後の公選法違反に匹敵する、政治家にあるまじき行為だったと思う。柿沢氏を「野党系」と認識して投じられたかもしれない自民党への批判票が、一定程度「自民党支持票」に化けた可能性を否定できないからだ。
同じ選挙区で似たようなことを繰り返してはならない。
「不戦敗」の補選は岸田政権の命運を左右しない
一つ付け加えるなら、巷間言われている「東京15区補選の結果が岸田政権の命運を左右する」などということは、おそらくもうないだろう。
冒頭にも述べたが、この3補選で自民党が公認候補を擁立できたのは、島根1区ただ一つだけ。長崎3区は不戦敗となり、東京15区も結局は候補擁立に失敗した。野党第1党の立憲が3選挙区すべてに、第2党の維新も東京と長崎の2選挙区で公認候補を擁立したのに、である。
裏金問題で「国民への説明が足りない」と大きな批判を受けながら、信頼を取り戻すため国民に直接訴える最大の機会だったはずの選挙で「逃げ腰」の対応しか取れなかった。この時点で自民党は「戦う前から負けが決まっている」のである。