「開いててよかった」から「近くて便利」へ
コンビニの便利さの変遷を見てみると、1974年に1号店をオープンしたセブンイレブンは、当時のキャッチコピーとして「開いててよかった」を掲げていました。これは夜中でも開いている便利さをアピールするものです。
当時は夜中に買い物できる場所がなく、夜中の買い物ニーズを一手に引き受けることを成長のきっかけにしました。
ちなみに、夜の買い物需要で成長したという点ではドン・キホーテも同じです。ドンキは、あらゆる商品を揃え、それらを安く売るとともに、生活時間が24時間化している都市部において深夜営業を先駆けたことで大きく成長しました。
コンビニ業界に話を戻すと、街中にコンビニが増えたことで、夜に買い物する不便さが解消され、「開いててよかった」ありがたみが薄れました。
この変化を踏まえて、セブンイレブンのキャッチコピーは「開いててよかった」から「近くて便利」に変わりました。コンビニの価値を「夜でも開いている店」から「近くて便利な店」に変えたわけです。
価格で比べればスーパーで買ったほうが得だが…
コンビニの強みである「便利さ」は、忙しい人が増えることによってその価値を高めています。
今後もコンビニをスーパー代わりに使いたい人たちは、すぐに飲むための500ミリリットルの飲料だけではなく、買い置きのための2リットルの水をコンビニで買うでしょう。
コンビニの商品は基本的に定価販売ですから、価格で比べればスーパーで買ったほうが得です。そのことは消費者も知っています。
しかし、夜でも開いていて、スーパーよりも店舗数が多いため、コンビニの水を買います。ティッシュペーパーやトイレットペーパーも買います。つまり「便利さ」は「安さ」に対抗する武器になるということです。
これは日用品や価格競争が起きやすい商品を扱っている企業にとってヒントになるでしょう。日用品などは品質の差がつきづらく、そのせいで価格競争が起きます。
しかし、そこに便利さ(便利に買える)という価値をつけることで高くても売れるようになるのです。